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別に責める意図はなかったのだが、ウリエルはきまりが悪そうに目を泳がせた後、誤魔化すように話題を変えた。
「あ、明日の決勝戦は、二人のどちらかが優勝することになるのよね~。なら、何かお祝いの準備をしないと! 私としては、お祝いといえばお酒だと思うのよ~」
ウリエルはそう言って、俺におねだりするような目を向けてくる。
そういえば、彼女はゲームでも酒好きという設定だった。
アデルの仲間になるキャラクターには、それぞれ信頼度を上げるアイテムがあり、ウリエルの場合は、それがお酒だったのだ。
この信頼度を上げると色々と利点があるので、俺は全員の信頼度を最大にまで上げている。
ウリエルにも、お酒が手に入るたびに渡していた。
俺におねだりしてくるのは、その時の記憶が残っているのだろう。
しかし肝心の祝われる側であるカリーナ達三人は、微妙そうな顔をした。
「わたくし、以前に一度だけお酒を頂いたことがありますの。でもその時から、お酒は絶対に飲むなとお兄様から言われておりまして……」
「ちょうど今、試しにカリーナに飲ませてみたくなったけど……私自身は、あまり飲みたいとは思わないかなぁ」
「私も、好きじゃない」
大不評に、ウリエルが頬を膨らませる。
まだお酒を美味しいと思える年齢じゃないだろうから、当然だろうに。
「お祝いか……」
実は、今日のメニューもお祝いのつもりで随分と豪勢にしていたのだ。
それ以上となると、かなり特殊な食材が必要になってくる。
明日の夜までに手に入れるには、アデルの力を駆使しても苦労するだろう。
でも、頑張ったカリーナのために一肌脱ぐのも悪くないと俺は思ったのだった。
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