第15話 ウリエルの依頼

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「それは……ギルド長が、アデル様はお金に困っていないので、金銭での報酬は喜ばないと仰いまして……」 「そ、そうか」  ルアンナが気まずそうに、俺を窺っている。  視線がちょっと生暖かい感じがするのは気のせいだろうか?  依頼を受ける報酬として、俺がウリエルに要求したのだと思われているのかもしれない。  誤解だ、これはウリエルが勝手に報酬にしているだけで、俺はちっとも嬉しくな……いや、正直ちょっと嬉しいけども。  まあ確かにお金には困ってないので、ウリエルの言葉にも一理あった。  ちなみに妖狐の里の火狐酒とは、そのまま妖狐が造ってるお酒のことだ。  この依頼を達成したら、どこの酒好きの手に渡るのか丸分かりである。  パラパラと羊皮紙を捲って他の依頼を見ていくが、見事に酒絡みの依頼しかない。  ウリエルの私利私欲感が、半端なかった。  大丈夫なのか、魔法使いギルド。  それに、報酬も「手を繋ぐ」とか「耳かき」とか、俺は子供かと言いたくなるようなものばかりだ。  危険な依頼を受けさせるなら、もっとサービスしてくれても――  依頼内容:ドラゴンの秘境にある、八塩折仙酒の入手  報酬:ぱふぱふ  なんか凄いのがあった。  危険度も他より跳ね上がっているが、報酬もやばい。  いや、だがゲームでのこれは、期待させておいて金管楽器というオチだった。  ゲームなら笑って済ましたが、実際に目の前でラッパを吹き鳴らされたら、やるせなさすぎる。  どうしようか?  この世界はゲームとは違う。  そこに賭けてみるべきか?  いやいやいや。  報酬に目が眩んで、本来の目的を忘れるところだった。  俺の目的は、料理の材料だったはずだ。  そして秘境にいるドラゴンからは、料理スキルに使える材料が手に入る。  これは今の俺に、あつらえむきの依頼だった。  決して報酬のために受けるわけではない。  意を決してこの依頼を受けるとルアンナに伝えると、ちょっと冷たい目をされた。  違うんだからね! 「それでは、ご武運を」 「あ、ああ……」  俺はルアンナのぎこちない営業スマイルから逃げるようにして、魔法使いギルドを後にした。  その足で王都の外にまで出て、風属性の魔法である【天翔】を発動させる。
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