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「お、お待ち下さい、お祖父様。あれは……あれは、何かの間違いで――」
「やめんか、見苦しい」
ぴしゃりと切って捨てられ、レベッカは口をつぐむ。
思わず縋るように首のネックレスに手をやると、祖父は眉を顰めた。
「お前、その首飾りはなんだ?」
「……え?」
問われ、レベッカがその魔力値の底上げをする力がある魔道具のことを説明していくと、祖父の表情がどんどん険しくなっていく。
思わぬ反応に戸惑っていると、祖父が底冷えのするような声を上げた。
「そのようなものを、なぜお前が持っている?」
「これはお父様が私に送って下さったもので――」
レベッカの言葉の途中で、祖父は部屋の入り口付近でこちらを窺っていた男に、ギロリと睨むような視線を向けた。
レベッカの父親にあたるその男は、慌てたように首を横に振る。
「待て、レベッカよ。私は知らないぞ?」
「そ、そんな! たしかにこれは――」
「二人とも黙れっ」
杖の先を床に打ち付けて二人に口を閉じさせると、祖父は忌々しげにレベッカの首にあるネックレスを睨め付けた。
「一級クラス以上の魔道具だと? お前の話が本当なら、それ一つで小さな家が傾くほどの品だ。今のこやつに、その価値はない」
はっきりとそう言い切られ、レベッカは顔を俯かせる。
この魔道具の価値は、彼女もなんとなくだが知っていた。
だからこそ、父親からお祝いだとプレゼントされた時は、はしたなくも小躍りしそうになるほど嬉しかったのだ。
自分に、一級クラスの魔道具に相応しい価値があるのだと認められたのだと思った。
だがそれは今、真っ向から祖父に否定されてしまった。
「まったく無駄金を使いおってからに……それが、誰の血税で買われたと思っておる」
「……」
「儂は何度もお前に教えたはずだ。民を守れぬ弱き貴族に価値はないと」
「……はい」
それは、レベッカが祖父から教えられ、ずっと抱いてきた信念だ。
これまで彼女を支えてきたものが、今は逆に重圧となってレベッカを押し潰そうとしてくる。
「今のお前に、その魔道具に見合う価値はない。分を弁えんか」
「申し訳ございません」
祖父の言葉はどこまでも正しく感じられ、レベッカは悔しさから目に涙を溜めながらも、頭を下げた。
「ふむ……お前に勝ったあの娘。たしか、名をカリーナと言ったな」
「はい」
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