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第17話 決勝戦
年に一度の、トウェーデ魔法大会。
その決勝の舞台に今、カリーナは立っていた。
対するは、トウェーデ魔法学院史上、最高の天才と謳われている少女。
齢十三にして一級魔法使いクラスの実力を誇る怪物。
これまでの全試合で、対戦相手を圧倒し、秒殺で勝ち続けて決勝まできている。
しかし、今日も同じようにエミリアの圧勝で終わると思っている観客は、少数派であった。
観戦に来た人間のほとんどが、此度の戦いの行方を予測できないでいる。
なぜなら、その対戦相手であるカリーナもまた、圧倒的な実力で相手を一蹴し続け、決勝まで上がってきたからだ。
一体、どちらが勝つのだろうか?
観客のそういった反応は、カリーナもなんとなく肌で感じ取れる。
不思議な気分だった。
この会場にいる誰もが、エミリアのような一級クラスの魔法使いと、自分のような最下級の魔法使いを比べて、どちらが強いのか判断しかねている。
成績や魔法使いのランクでいえば、比較対象にすることすらおこがましいはずなのに。
最高の天才に、最低の劣等生が勝てるはずないのに。
みんな、迷っている。
そう思うと、何だか滑稽で笑い出しそうになってしまった。
そもそも数ヶ月前のカリーナは、自分がこんな舞台に立てるとは思っていなかった。
憧れることはあっても、何度も夢見ることはあっても、本当にここまで来られるとは思っていなかったのだ。
ふとカリーナは、自分をここまで連れてきてくれた恩人の姿を目で探す。
だが、昨日までは座っていたはずの席に彼の姿はない。
何かあったのだろうか?
どこかで、自分を見てくれているのだろうか?
カリーナがそんな不安を抱いていると、距離を置いて向かい合っていたエミリアが、彼女の名を呼んだ。
「カリーナ」
「何ですの?」
「今日は、手加減なしでいい。本気で来て」
エミリアの言葉に、カリーナは目を伏せる。
彼女の【魔眼】には相手の魔力量が見え、ある程度の実力を見抜いてしまう。
だからこそエミリアは、レベッカと戦うことになったカリーナに、手加減をするよう助言できたのだ。
そんな【魔眼】持ちの彼女が、カリーナに全力で来いと言う。
それはつまり――
「……やはり、わたくし程度の実力では、恐れるに値しませんの?」
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