第17話 決勝戦

1/5
前へ
/110ページ
次へ

第17話 決勝戦

 年に一度の、トウェーデ魔法大会。  その決勝の舞台に今、カリーナは立っていた。  対するは、トウェーデ魔法学院史上、最高の天才と謳われている少女。  齢十三にして一級魔法使いクラスの実力を誇る怪物。  これまでの全試合で、対戦相手を圧倒し、秒殺で勝ち続けて決勝まできている。  しかし、今日も同じようにエミリアの圧勝で終わると思っている観客は、少数派であった。  観戦に来た人間のほとんどが、此度の戦いの行方を予測できないでいる。  なぜなら、その対戦相手であるカリーナもまた、圧倒的な実力で相手を一蹴し続け、決勝まで上がってきたからだ。  一体、どちらが勝つのだろうか?  観客のそういった反応は、カリーナもなんとなく肌で感じ取れる。  不思議な気分だった。  この会場にいる誰もが、エミリアのような一級クラスの魔法使いと、自分のような最下級の魔法使いを比べて、どちらが強いのか判断しかねている。  成績や魔法使いのランクでいえば、比較対象にすることすらおこがましいはずなのに。  最高の天才に、最低の劣等生が勝てるはずないのに。  みんな、迷っている。  そう思うと、何だか滑稽で笑い出しそうになってしまった。  そもそも数ヶ月前のカリーナは、自分がこんな舞台に立てるとは思っていなかった。  憧れることはあっても、何度も夢見ることはあっても、本当にここまで来られるとは思っていなかったのだ。  ふとカリーナは、自分をここまで連れてきてくれた恩人の姿を目で探す。  だが、昨日までは座っていたはずの席に彼の姿はない。  何かあったのだろうか?  どこかで、自分を見てくれているのだろうか?  カリーナがそんな不安を抱いていると、距離を置いて向かい合っていたエミリアが、彼女の名を呼んだ。 「カリーナ」 「何ですの?」 「今日は、手加減なしでいい。本気で来て」  エミリアの言葉に、カリーナは目を伏せる。  彼女の【魔眼】には相手の魔力量が見え、ある程度の実力を見抜いてしまう。  だからこそエミリアは、レベッカと戦うことになったカリーナに、手加減をするよう助言できたのだ。  そんな【魔眼】持ちの彼女が、カリーナに全力で来いと言う。  それはつまり―― 「……やはり、わたくし程度の実力では、恐れるに値しませんの?」
/110ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1146人が本棚に入れています
本棚に追加