第9話 入浴

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 アキラに見られるというのは別の意味で大問題になると思うが……それとは別に、聞いたことのないマナーに、カリーナは首を傾げる。  そもそも彼女は、実家では一人で浴室に入ったことはなく、いつも侍女にされるがままだった。  爪の先まで磨き込むのは侍女の仕事で、自分ではまともに体を洗ったことがない。  そのことに思い至ってカリーナが戸惑っていると、彼女が元貴族の子女だと知っているウリエルは、面白い悪戯を思いついた時の子供のような笑みを浮かべた。 「もしかして、お風呂の入り方が分からないのかしら?」 「え、ええ。お恥ずかしながら……」 「ふふふ、なら私が教えてあげるわね~」  嫌な予感を覚えるも、どうしていいか分からず、カリーナは浴場に端に備え付けられていた椅子に座らされた。  そして手近にあった入れ物から見たこともない液状の何かを手に取ると、ウリエルはザラザラとした奇妙な布を使ってカリーナの体を洗い始める。  珍しい布や洗剤を使っていること以外は、侍女たちがやっていたことと別段変わった所はない。  だというのに、どうしてか背筋にぞわぞわと悪寒が走った。  体を探られるような手付きに、思わず眉を顰めてしまう。 「ん~」 「どうかしましたの?」 「子作りをするには、まだちょっとだけ成長が足りないかしら?」 「こ、こづくっ――」  ウリエルの発言に、カリーナは思わず彼女の手から逃れるようにして、立ち上がってしまった。 「あら、どうしたの?」  ニコニコと悪びれない笑顔に、カリーナは堪えきれずに嘆息する。  そして、恨めしそうにウリエルの大きく実ったそれに目をやった。  たしかに彼女のそれに比べれば、自分のものは貧相な育ち方しかしていない。 「わたくしには、まだ早いです」 「そうかしら? あと二年ぐらいで、早い人は結婚している年齢よ?」 「あと二年もありますわ」 「たった二年しかないわよ~」  悠久の時を生きるウリエルと、まだ十三年ほどしか生きてないカリーナとでは、時間への捉え方が違っているのはしょうがない。  カリーナはまた小さく溜息を付いて、話を変えることにした。 「どうして、そんな話を?」 「ん~、優秀な子孫は沢山いた方がいいからかしら? 私じゃ、人間の子供は産めないもの」 「はあ……」  言っていることがよく分からず、カリーナは困惑する。  だがウリエルはそれに構わず、自分のペースで話を続けた。 「ねえ、彼のことはどう思ってるのかしら?」 「彼?」 「貴女のお師匠様のことよ~」 「素晴らしい方だと思いますわ」
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