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「常滑ヘルパーはわかるね」
仕事上のつながりよりも、手料理の差し入れで顔を覚えたヘルパーだ。比較的顔を覚えるのは早かったが、仕事ぶりを見る機会は今までなかった。
「家事援助に長けているし、信楽くんとも比較的歳が近いからしばらく一緒に回ってもらおうと思う。二ヶ月ぐらいはやってもらおうかな」
「良いでしょうか、信楽くん」
所長は意見を聞く姿勢を見せたが、異を唱える理由もなく、美也子は素直に頷いた。
次週のシフトから、たまきの予定に合わせて美也子は外へ出る。事業所に来たたまきを車で拾い、利用者の家まで一緒に向かう。バスや自転車での移動が多かったから楽になると喜んでいた。
研修目的というだけあって、たまきが受け持つのは掃除や調理といった生活援助がほとんどだった。専業主婦だった母親を彷彿とさせる手際の良さだったので、移動中に結婚生活について訊いてみたが、
「わたし独身よ。バツもついてないし」
あっさり予想外の答えを返されてしまった。
「そりゃ周りの友達は結婚してる人ばかりだけど。色々縁に恵まれなくてね。信楽さん結婚したいの?」
「別にそういうわけじゃないですけど……」
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