メシスタント・ヘルパー

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 やけに興味深げなたまきに困惑しつつ、美也子はハンドルを操る。次の利用者の家は少し遠く、普段のたまきはバスで移動する場所だった。 「常滑さんは仕事が早いと思って」 「そんなの、結婚は関係ないでしょ。一人暮らしが長かったら掃除も料理もそれなりにできるようになっていくし」  美也子の一人暮らしは五年に及んでいる。それだけの時間を過ごしながら、未だに家事援助が不慣れなどと言われる女もいるのだ。 「信楽さんは大学出てるんだよね、福祉系の学校?」 「四年制の、どこにでもあるような学校ですよ。この仕事選んだのもぶっちゃけ、他に就職口がなかったからで……」  たまきに悪気がないのはわかるが、この話題はどうしても言い淀んでしまう。就職活動をしていた頃は、他人がうらやむような内定先をゲットするという明確な目的意識があったものの、実際に就職してみるとその動機がいかに薄っぺらいものだったかわかる。自分にできることも見ないで、見栄だけで働き口を探していた当時の自分を引っぱたきたい。 「そんなに恥ずかしがることないよ。わたしだって食い詰めてこの仕事始めたんだから、動機は不純なもんよ」 「そうなんですか」
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