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味はやはり独特だ。カレーらしい辛みが強い上、塩っ気の強さが味の主張を強調して、水がなければとても食べられないほどになっている。胃もたれしそうなほどはっきりした味で、少なくとも朝食向きではない。空腹感よりも眠気を消滅させてくれそうな味は、夜食に少量食べるのが最も適切に思えた。
そんなカレーを前に、ゆき子は録画していたらしい昼ドラから目を離し、顔を輝かせた。そこまででサービスは終わりで、後は記録を書く時間となる。その間美也子はゆき子を横目で見ていたが、昼ドラを見ながら一定のペースで食べていた。辛さのせいか額に汗は浮かべているものの、満たされたその表情を見るに、健康食品としてカレーを食べているわけではないのがわかる。彼女はあくまで、昼食として明治時代に考案されたカレーを楽しんでいるようだった。
「じゃあ内海さん、また今度来ますね」
たまきが明るく挨拶をして、
「また来てね。信楽さんも時々はいらしてね」
味に満足しているのか、見た目の厳しさが和らいだ目でゆき子は見送った。
「本当にあの味を好きこのんでるんですね」
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