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次の目的地である安男のアパートへ向かう間、ゆき子の味覚についての話題になった。カレーの味について愛智を中心に真実を探したのが遠い昔のように思える。
「瀬戸さんにも言われたけど、利用者にとっての真実は自分たちの常識とはかけ離れてることも多いってことだよね。わたしだってあの味を再現しろって言われて、最初は疑ったよ。あの人味音痴なんじゃないのって」
「あれをカレーと思ってるって、すごいですよね」
「それはちょっと違うよ。ゆき子さんにとってはカレーなんだから。実際カレー粉使ったし、わたしもカレーのつもりで作った。ただ、味の好みがわたしたちとは違うってだけ。それを求めるならちゃんと応えるのが、キッチンを任された人間の心意気ってもんよ」
プロ意識という言葉が思い浮かぶような力強い声だった。迷いのなさが頼もしく、次のキッチンで共に働くのが楽しみになってくるのだった。
安男のアパートには相変わらず安っぽい油のような臭いが染みついている。以前は孤独の影を見るようだったが、数ヶ月ぶりに訪れた部屋には彩りが増えている。その彩りは安男にも影響を及ぼしたのか、
「今日はチーズを食べても良い日なんです」
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