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たまきは行動予定表を眺めていた。丹波、瀬戸、越前。それぞれ訪問、サービス、送迎となっており、全員昼まで戻ってこない。
「記録票持ってきたの。越前くんに渡して」
茶封筒に入っているのは、ヘルパーが仕事をこなすごとに書く記録だ。これを元に給料の計算や利用者への料金請求が行われる。月末から月初にかけて険しい顔で居残りしている越前の顔が思い浮かんだ。
「どう、忙しい?」
そう言いながらたまきは冷蔵庫からお茶を取り出して紙コップに注いだ。冷蔵庫の飲み物は誰でも飲んで良いことになっていて、これから補充のペースが上がっていくだろう。
「はい、まあ。利用者も色々で」
「信楽さんはここの特養から来たんだっけ」
「二ヶ月で異動させられたんですけどね」
自分の身の上を語るとどうしても苦笑が漏れる。決して今の仕事が閑職とは思わないし、夜勤はないものの一日の密度は濃くなったような気がする。異動してからあと一ヶ月ほどで一年になるが、その日々を丸ごと肯定できるほど働けたとは思っていない。未だに美也子は、特養における自分が余剰戦力だったのではないかという思いが消えないのだった。
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