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と、机の上に置かれたものを見つめて、
「ほっほっほっ」
丹波所長はいつもと変わらずのんびり笑っていた。
形で一目瞭然だったが、アルミホイルはおむすびを包んでいた。四つの見た目は全く違いがなく、それだけ精緻に形を整えられていた。
「……取らないんですか?」
越前が愛智に目配せする。
「いや、ここは上司を立てたいところで」
越前は丹波所長を見遣る。
「ほっほっほっ、ならば私はレディーファーストです」
丹波所長の穏やかな眼差しが美也子を包む。裏を感じさせない温かみを感じると、越前に選択権を譲る気がなくなる。
手前のおむすびを無造作に取る。三人ともそれに続くことなく、何故か美也子の動きを注視している。
「食べますよ」
「どうぞどうぞ」
どこかで聞いたような遣り取りを気恥ずかしく感じながらかじりつく。その瞬間、微かな塩気と爽やかな酸味が口の中で広がった。絶妙なかみ応えと共に染み出してくる旨みもある。これは梅おかかだろう。
「どうしたんですか、美味しいですよ」
三人はそれぞれ顔を見合わせ、妙に真剣な表情でおむすびを見下ろし、素早く取った。
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