メシスタント・ヘルパー

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 評価という割に二人はざっくばらんだった。美也子が去年の六月から居宅介護支援センターに異動してからどんな変化があったか、周りにどれだけ貢献できたか。また、介護職としての仕事ぶりはどうか。時々は至らない部分を指摘する声もあったが、おおむね二人の声は和やかで聞き心地は悪くない。思ってもみない展開に放り込まれながら懸命に働いた甲斐はあっただろう。 「三月には少し辛いこともありましたね。兼松さんのこと。特養でも看取りはあるので見回りの時に息が止まっているのを確認することはあるでしょうが、警察を呼ぶことはありません。精神的な負担が心配でしたが、平気ですか」 「はい、まあ……」  傑のことについては思うことがいくつもある。関わることができた短い時間の中で、もっと優しく包んでやれれば良かったという後悔が時々募るのだ。 「あれで良かったのかって、今も思いますけど……」  仕事の出来や内容より、死んでいく人間に対してどれほどのことができたのかという自問が続いている。本人が既にいない以上、答えは決して出てこない。 「その気持ちは大事にすることです」
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