こころのカビ

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 じめっとしたシャツの匂いが鼻の奥をくすぶった。梅雨だというのに窓も開けず、二、三日も部屋干をしていたせいなのだが、カビが生えたのはどうもシャツだけではない。  久しぶりに見る気がする台所に立ち、おそろいのマグカップを眺めれば、この間出ていった彼のことを思い出す。  悪いのは全部、私なのだ。  彼の仕事が忙しいことは分かっていたし、それをとやかく言うことを彼が嫌がっていることも分かっていた。それでも、多くの友人を招く結婚式はどうしても成功させたかった。 「好きにしていいよ」なんて、結婚式にあまり興味のない男の身勝手で投げやりな意見だと思っていた。けど、いざ彼とブライダルに行ったところで、「あなたは何も分かってない」と私が自分の意見を通すだけだった。  これなら我慢して一人でこなせば良かった、そう彼を責め立て保身してみる。けど思い返せば、休みの日には何も言わずについて来てくれていたし、予算の面でも彼はしっかりと考えてくれていた。  求めすぎてしまったのだ。それは昔からの私の悪い癖だ。
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