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その日最愛の彼が亡くなった。
何が何だか分からなかった。泣いた、苦しんだ、後を追おうとすら考えた。そんな中、気づくと私は彼の家に居た。
相変わらず綺麗な部屋。彼の香りがする部屋。少し汚いのが愛おしい部屋。そんな中で唯一綺麗な所は彼の趣味の場所だった。綺麗に並んだ作品達、それを形作るための道具、そして全く関係ないのに大事にしていたオルゴールの箱。
「このオルゴールの中身見たことなかったなぁ…」
そんな気持ちで箱を開ける。中身はオルゴールではなく、「僕の狂おしいほど愛しい人へ」と書かれた手紙だった。
「これ、私への手紙だ…」
彼はいつも手紙にはこのように書いていた。震える手で封筒を開けると、何枚もの手紙が出てきた。
「貴方がこの手紙を読んでいる、この事実から僕は死んでしまったのでしょう。僕は貴方のことが…いや、そんな言葉では表せれない気持ちでした。貴方には様々なお願いをしてばかりだった。でも、そんな僕でもやり残したことがあまりにも多くありました。もし君が僕のことが好きなら、僕のやり残したことを貴方に成し遂げて欲しいのです。リストにしておきました。でもやるかどうかは貴方にお任せします。貴方にこの願い達を叶えて欲しい。」
一枚の手紙の内容は大体こんな感じで、その他は彼のやり残したことのリストだった。理系で、データ作りが好きな彼らしい飾り気がなくデメリットも書かれているそんなリストだった。それを眺めていると、いつも一言多い彼が脳裏に現れた。
「わかった…うん…やる…」
これが彼への思いの証明だった。
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