夢見たプロポーズ

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夢見たプロポーズ

「俺と結婚してくれ!美都」 プロポーズ、それは女の子誰しもが将来の夢として待っている言葉。 私もその例外ではなく、いつか好きになった人にプロポーズをされて 結婚をしたいと思っていた。 だけど、それは今日この瞬間を思い描いていたわけではない。 そもそも、この私の目の前にいる男性は誰なの?? さっぱり分からない。 顔を見たことも、出会ったこともない男性からの 突然の求婚に困惑してしまう。 「え、あ、あなた誰なの??」 その言葉は本心からくる素直なもので、思わず口にしていた。 男はその言葉を認識するや否や困惑したような、 それでいて悲しげな表情を浮かべる。 「え、俺だよ」 男は消え入りそうな声でそう呟いた。 しかし、そんな風に言われたって、知らないものは知らないのだ。 「だ、誰かと人違いをしているのでは・・・。」 自分の名前を呼ばれながら、プロポーズをされたにもかかわらず、 その返しはおかしいと自分の中でも思う。 だけどもそうとしか考えられないこの状況。 男は今にも泣きそうな顔になっていた。 「そ、その顔は嘘を言ってはいなさそう。 で、でもそれじゃあ、本当に俺のことを・・・。」 男の目から一筋の涙がこぼれ堕ちた。 これではまるで私が悪いことをしているようではないか。 だけど、彼のことは本当に知らない。 私はその男の涙に対して、少し不気味に感じてしまう。 (この場から逃げよう・・・。) 私の心は彼から一刻も早く離れる道を選択した。 彼の泣き顔を尻目に見ながら、私は走り出した。 「ま、待ってくれよ!!美都」 彼は私が逃げてしまったことに気付いたのか、 涙を流しながら追いかけてきた。 私はその姿に恐怖を感じてしまった。 だからこそ、後ろを振り返ることなく、全力で地面を蹴り続けた。 気が付けば、彼の制止する声はどんどんと遠ざかっていった。 もう私の視界に彼の姿はなく、一安心した私は、 自分のポケットの中を弄った。 入っていたのは私のスマホで、それを取り出した。 しかし、そのスマホを私は知らなかった。 「あ、あれ、これ私のスマホじゃない・・・。ど、どういうこと??」 私は自分のものではないそのスマホに不気味さを感じながらも、 なぜか開いてしまう。 「え?なにこれ・・・。」 私はまたもや困惑してしまう。 スマホには暗証番号が必要で、開くことはできそうもなかったが、 そこではない。 暗証番号を打ち込む画面の裏に映し出されたものに驚きを隠せなかった。 「こ、これ、わ、わたし・・・?」 そこに映し出されていたのは、私の知っている私ではなかったが、 確かに私だった。 年齢は今から10年くらい後の私。 そして、その隣に映し出されていたのは、 さっき自分に求愛してきた彼だった。 その上、二人は恋人同士なのか、顔と顔をぴったりとくっつけていた。 まるでキスをする3秒前のような雰囲気でだ。 瞬間、私の心臓は今まで感じたことのないほどにドキドキと脈を打つ。 「はぁはぁ。や、やっと見つけたよ。美都」 最後に聞こえてきたのは彼の声だった。 「ふわぁ、よく寝たぁ。」 教室の机の上でいつのまにか寝ていたようで、 私の顔には手の跡がびっしりとついていた。 「おいおい。葉山!お前なぁ、何堂々と授業中に寝てんだ。顔洗ってこい」
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