色っぽい中学生

　はたちの頃、私は函館・五稜郭の近くにあった「ポパイのほうれん草」というレストランで、ディスクジョッキーのアルバイトをしていました。

　その店には「リクエストタイム」があり、お客様からリクエストカードをもらって、レコードをかけながら、おしゃべりをするという毎日を過ごしていました。

　お店のチラシ配りもよくやりました。

　DＪ終了後、１時間ほどです。

　函館丸井今井というデパートの歩道で私はチラシを配っていました。

　１９８３年２月１３日…調べてみたら、やっぱり日曜日でした。

　約１ヶ月後に卒業です。

　卒業と同時に函館を去ります。

　バイトも終わりです。

　午後５時までがＤＪとしての出番だったので、チラシ配りはそのあと６時までの１時間でした。

　午後６時の函館の気温は、マイナス６．６℃でした。

　便利な時代になりましたね。

　調べられるのです。

　っていうか、寒すぎるって！

　鬼か！

　ウチの店長は！

　「かずきさ～ん！」

　凍えながら、チラシを配っていると、元気な女の子の声が聞えてきました。

　「さゆり（仮名）ちゃん！」

　２時間ほど前まで、お客様としてレストランに来ていた高校生…です。

　「ホントに、チラシ配ってたんだね」

　「そうだよ、早く帰りたいよ～」

　すっかり、甘えん坊でした。

　「う～ん、元気出して！チョコあげるから、ハイ！」

　そうそう、翌日はバレンタインデーですね。

　「ありがとう、さゆりちゃん！これ、本命チョコでしょ？」

　「アハハハハ、んなわけないでしょ！年が離れ過ぎていて、恋愛対象にならないよ～」

　さゆりちゃんは、大笑いです。

　かわいい子だなあ～。

　それに、高校生…にしては、色っぽいし…。

　「そんなことないじゃん！オレ２０歳だよ！さゆりちゃん、いくつ？高校２年とかでしょ？３歳くらいの年の差なんて…」

　「アハハハハ…」

　さゆりちゃんは、笑い転げてしまって、なかなか立ち直れません。

　「やっぱり、そんなふうに見られちゃうんだよね、まだ１７だといい方かな？私、中学２年よ！」

　「え～～～～～！中２！！！」

　ようやく、わかりました！

　さゆりちゃんは、日曜日だけのお客様でしたが、いつも女の子の友達と一緒でした。

　その子が中学生くらいにしか見えなかったのですが、いつもリクエストカードをくれるのは、さゆりちゃんだけだったので、さゆりちゃんを中心にすると、一緒の女の子が幼すぎるのだろうと思い込んでいたようです。

　「そうかあ、じゃあ、今度から、さゆりちゃんを色っぽい中学生と呼ぼう！」

　「なにそれ、センスな～い！」

　それから、バイトが終了するまでに、３回ほど来てくれたと思います。

　もちろん、１ヶ月後にはお返しをしました。

　「もしかして、ポパイのＤＪやってた、かずきさんじゃない？」

　声をかけられたのは、８年後、私が２８のころでした。

　場所は、本町（函館五稜郭近郊）のスナックでした。

　「えっ！ちょい待って、さゆりちゃん？」

　出張で仕事のあと、飲んで、数人でなだれ込んだ店でした。

　「やっぱり、かずきさんだあ、すごい！８年ぶりかな？どうしたの、その頭、キャハハハハハ」

　まあ、頭はたしかに薄くなりつつありましたが…。

　「へえ～、ここのスナックで働いているんだ！」

　当時、さゆりちゃんは、２２くらいだったと思います。

一段と色っぽく、そしてグラマーになっていました。

　「かずきさん！ここのママは、ホントの私のママなのよ！」

　なんと、実の母親がママで、娘がお手伝いをしていたのです。

　１９で結婚したさゆりちゃんは、２人のこどもを産み、そのあとすぐに離婚したそうです。

　なにごとも、早いなあ～。

　「また、遊びに来てね～」

　ママとさゆりちゃんに見送られました…。

　とは言っても、函館から１００キロ離れたところに住んでいると、そんなに飲みに行く機会はありません。

　２年くらいあとだったと思います。

　さゆりちゃんの店は、名前が変わっていました。

　別のママさんでした。

　そのママに聞いたら、前のママと店を手伝っていた娘さんは、東京の方に引っ越したそうです。

　色っぽい中学生。

　今、どうしているんだろうか？