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「やさしいお兄ちゃんがいていいね」
思わずもれた言葉に双子の兄弟がうれしそうに反応する。
「にぃーに、だーいすき」
「僕の自慢の兄さんです」
「ありがとうな。オレもおまえらが大好きだぞ」
笑い声がやさしい音を奏でる。那砂くんが双子の兄弟をぎゅうぎゅうに抱きしめる光景が微笑ましくて、わたしも自然と笑みがこぼれた。
たくくんが那砂くんの腕からすり抜けると、わたしのそばまで来て、制服の裾を引っ張って手招きをする。かがんで耳を近づけると、小さな手でわたしの肩をつかみながら内緒話をするように耳元に顔を近づけてきた。
「お姉さんはボクのねぇーねになってもいいよ」
「えっ?」
ねぇーねということは、双子の兄弟のお姉さんになることだから……。言葉の持つ意味に気づいてしまい一気に顔が熱くなる。別にそういう意味でいったワケじゃなくて、ただ単に仲良くなりたいのねぇーねの意味だとわかってはいるど……それでも純粋に無邪気な笑顔を向けられてしまうとどう答えていいかわからずに固まってしまう。
「内緒話の声が全部聞こえたぞ」
「僕もあなたが僕の姉さんになりたいのなら受け入れます」
「えっ?あの……」
「いいな、お姉さん」
双子の兄弟の言葉にパニックになって慌てているのに、那砂くんまでわたしをからかうから心臓が持たない。もういつ爆発してもおかしくないほど心臓の音がうるさいくらいに鳴り響いている。
「ってことで……夕飯食べていくよな、ねぇーね」
「はっ、はい!」
那砂くんの口から『ねぇーね』という言葉が出て、驚きのあまり思わず大声で返事していまい、彼にくすりと笑われてしまう。
「みんなで食べた方が楽しいしな」
「そっ、そうですね」
「よっしゃ!今日は特製お子さまランチだ」
「「「特製お子さまランチ!」」」
伝説のパティシエと呼ばれている那砂くんは、年の離れた弟たちが大好きでちょっといじわるだけど、家族思いのお母さんみたいな温かい男子でした。
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