9人が本棚に入れています
本棚に追加
/12ページ
「フラれてんの」
「うるせーよ」
「深桜みたいに小さくてかわいいお子ちゃまはタイプじゃないってさ」
「だれが小学生だよ!オレは高校生だ」
いじりに自虐で返して笑いに変えてくれた。それだけで教室の空気が元に戻っていく。冷たく突き放したわたしをかばってくれるような行動に胸が余計に痛んでもやもやと後悔という文字が積もっていく。
「今のはひどいんじゃない」
「……わかってる」
だから帰りまでにちゃんと謝ろう。
那砂くんがひとりになるのをじっと待っていても、なかなか彼はひとりにならない。男女関係なく誰とでも仲がいい。だから常に那砂くんの周りには人がいる。今もカップケーキのレシピを教えてほしいと女子が彼を囲う。
本当は今日中に謝りたかったけど、まだ帰る気配はないし、ひとりにならなそうだから明日でもいいかな?という諦めの気持ちがわたしを椅子から立ち上がらせた。
もやもやとする気持ちがふくらんで、足取りが重い。それでも廊下をゆっくりと歩いていくと、後ろから声をかけられる。振り向くとそこには、走ってわたしを追いかけてくる那砂くんの姿があった。
「……どうして?」
「突然ごめんな」
肩で息をしながら那砂くんがわたしの前に止まる。
謝らないと。そう思うのに突然の出来事に言葉がでない。そんな自分がはがゆくて手のひらをぎゅっと握りしめた。
「さっきは……ごめん。もしかして甘いもの嫌いだった?」
わたしが謝らないといけないのに、先に謝られてしまって、胸がズキンとして苦しくなる。ただ首を振ることしかできなかった。
最初のコメントを投稿しよう!