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「あなたは兄さんが見えるなり保育園を飛び出しました。なにをするのかと思ったら知らない人に声をかけるなんて、たくはバカですか」
無表情で子供とは思えない口調でしゃべりだした小さな男の子をあぜんと見つめていると、知らない人といわれたわたしに視線を向けるから、思わず苦笑いを浮かべた。
「バカじゃないよ!それに知らない人じゃないよね?にぃーに」
「にぃーにの学校のお友達だよ」
「ほら、知らない人じゃないよ」
「そこじゃないんですよ」
「そこじゃないってなんだよ。きょーはいじわるだから嫌いだよ」
小さな男の子たちがけんかを始める。
「けんかはやめろ!ふたりともごめんなさいして仲直りな」
「いやです。僕は本当のことをいっただけです。ごめんなさいなんてしません」
「ボクだっていじわるいわれたからごめんなさいしないよ」
ハラハラとしながら見ているわたしとは対照的に、那砂くんは冷静な顔でふたりを見つめると、ふたりに目線を合わせるようにしゃがむ。
「ふたりとも兄ちゃんのとこおいで」
渋々というように目線も合わせず、ふたりともうつ向きながら那砂くんに近づく。ふたりの頭の上に手をのせると、やさしい口調でさとすように那砂くんが口を開いた。
「きょーはたくが車にひかれちゃったらイヤだな、知らない人に連れていかれたら大変だなって心配してくれたんだぞ。わかるか?」
「うん」
「きょーもたくが心配なら心配だよってちゃんといわないと伝わらないぞ。わかるか?」
「はい」
「よし!仲直りしな」
しゅんとしながらふたり同時に「ごめんなさい」というと、握手をする。
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