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「よし!腹減ったから早く帰るぞ」
ほっと胸をなでおろして、歩き出そうとしたら、わたしの手を握りしめる小さな手に足を止められる。
「お姉さんも一緒に帰ろう」
「えっ?」
「お姉さんはおうちに帰るんだよ」
「たくと遊んで!いやだ?」
キラキラとした目で見上げられると断れない……。
「お姉さんいたら迷惑じゃないかな?」
「迷惑じゃない」
「僕は別にかまいませんけど」
「じゃあ……お姉さんと遊んでくれる?」
「いいよ」
「仕方ないですね」
「本当にいいのか?」
「迷惑じゃないなら」
「ありがとうな、文目さん」
「わ~い」といいながらわたしと那砂くんの間に来て両手を繋がれているのはお兄ちゃんのたくくん。
大人のような口調でクールに話すけど、ずっと那砂くんの手を離さないで独占しているのは弟のきょーくん。
ふたりは顔も性格も似ていないけど双子の兄弟らしい。
「楽しいね」
たくくんが無邪気に笑う。わたしもそう思ったよ。小さな手が温かくてくすぐったい気持ちにさせてくれるのに、なんだか泣きそうになっちゃったんだ。悲しいからじゃなくて、小さな手がわたしの気持ちを柔らかく包んでくれるからかもしれない。
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