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考えてみると、クラスの男子の家にいきなりあがりこむなんてわたしにはありえない事件かもしれない。双子の兄弟のかわいいお誘いに、そんなことにすら気づかずにいた。
「おじゃまします」
「早く入って」
靴を脱ぎかけてるわたしの手をたくくんがひっぱる。
「帰ってきたらうがいと手洗いだろ」
「はーい」
ふたりで手を洗いにいく後ろ姿を見て自然と笑みがこぼれる。
「文目さん、適当に座って」
ベランダに干してある洗濯物を取りこみながら那砂くんがいう。その後も世話しなくお風呂の準備をしている。
「あの……手伝うことある?」
「ん~じゃあ弟たちをお願いしていい?」
「お姉さん来て」
わたしの手をたくくんがひいてリビングに連れていくと、おもちゃ箱をひっくり返す。中からたくさんの人形が出てきた。
「かっこいいでしよ?これは……」
宝物だというヒーローのソフビをひとつずつ説明してくれた。
「覚えた?」
「……覚えるね」
「わかった。じゃあもう1回教えてあげるね」
聞いたこともないヒーローの名前が頭の中をぐるぐると回る。
「いっぺんに教えてもお姉さんは覚えませんよ」
絵本を読みながらきょーくんが冷静な口調でいう。
「そんなことないよ」
「そんなことあります」
またけんかが始まってしまうのではと、慌てて間に入る。
「なんの絵本を読んでるの?お姉さんが読んであげるよ」
「ばかにしてるんですか?文字ぐらい読めます」
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