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「へぇ~すごいな。じゃあお姉さんに読んで?」
「いやです」
「ボクが読んであげるよ」
きょーくんが読んでいる絵本をたくくんが取り上げてしまう。
「返してください」
「お姉さんに読んであげるから貸して」
「いやです」
ふたりで絵本を引っ張り始めたから止めたいのに、どうしていいかわからない。小さな子は突然なにをするのか予測もつかないし、どう対応すればいいのか、わたしには難しい問題に思えた。
「ほらほら、引っ張ると破れるぞ。痛いよって絵本さんが泣くぞ。いいのか?」
「いやだ」
「泣きませんよ」
ふたりが同時に手を離すから、絵本が床に落ちる。
「お風呂わいたぞ。ちゃんと絵本さんをお家に戻してやれよ。あとソフビも、誰だばらまいたのは?」
「ボクだよ」
「怪獣がきたらすぐに戦えるように基地に帰してあげろよ」
「わかった」
あっという間に部屋を片付けると、ふたり仲良くお風呂に向かった。その後も那砂くんはキッチンで夕食の準備を始めた。
「なんかバタバタして悪かったな。にぎやかだろ?」
「そんなことないよ。それにすごいね……」
「んっ?なにが?」
弟の面倒を見ながら、帰ってきてから休むことなく那砂くんはずっと家事をしている。
「わたしひとりっ子なの。だからにぎやかでうらやましいな。家に帰っても親は帰りが遅いから誰もいないし、寂しいし。夜ご飯はコンビニばかりで……わたし、なんだか恥ずかしいなって」
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