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この地には、まだ奴隷制度が残っている、正直興味は無い、裕福な家系で育ったため、家には数名の奴隷がいるが、他の使用人に比べると扱いはひどいものだ。
「そこのにーちゃん」
偶然通りかかった奴隷市場、買わないか聞かれた、檻にはボロボロシーツを羽織って体育座りをした、髪色は抜けて鼠色ボサボサの随分年下の子供が入っている、奴隷とはいえどこんな汚い人間、裕福な家系の俺からしてみれば、買って帰るなど考えただけでも吐き気がする。しかし、あの人間の翡翠色の瞳だけが、どうも脳裏をチラつく。奴隷は基本あまり頭がよくない、多くが貧困な暮らしの中売られた者達、そんな環境でまともな教育を受けられていない、でも、あの子供はまだ間に合うのでは無いだろうか、これから教え込めば、文字の読み書きが出来るのではないだろうか、数を数え計算ができるのではないだろうか。色々考えた、多忙な両親を持ちあまり誰からも構ってもらえずに育った自分がここまで他人を気にかけるのは初めてだ
「うじうじしてるのは自分らしくないな」
夜の遅い時間外はかなり寒いが俺はコートを着て、あの奴隷市場へ向かった。あの奴隷はまだいた、誰にもばれないように連れ帰り、召使に言って奴隷を風呂に入れてやった、薄汚れていた髪や肌は綺麗になった、ダイヤの原石とでも言うのだろうか、鼠色だと思っていた髪は白色だったボサボサだったのは少しウェーブがかかってオシャレなくらい、女であることが分かったし、かなり整った顔立ちをしている、言葉はきちんとしゃべれるし、なぜか料理も上手い。少しずつではあるが傷も大分よくなった。昔から誰からも愛された実感が無かった俺だが、この子供に懐かれるのはとても嬉しい。あの日もし夜に買いに行かず、翌日にしていたら別の誰かが買っていたかもしれない、あの商人が声をかけなければこの存在に気付かなかった。色々な偶然でかったこの奴隷、今では心の中の何よりも大切だ。
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