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一時間目 王道学園での俺的処世術
「俺は、今後一切目立ちたくねえ!」
これがわりと昔からの俺の切実かつ真剣な悩みだったりする。
俺の名前は、久瀬泉璃。名前からエステの勧誘電話やら矯正下着のセールス電話がくるが、残念ながら俺は高校二年の男児である。
そんなことはいい。まず、聞いてくれよ兄弟。この目立ちたくないっていうのは、なにも俺が陰キャのコミュ障だからってわけじゃないんだ。どちらかといえば俺は陽気な方だし、友達だって少なからずいる。イマジナリーなんかじゃないから安心してほしい。
「じゃあ、なんで目立つのが嫌なの?」
という質問が幻聴だろうけど聞こえてくるからお答えしよう。目立つというのは注目が集まるってことだ。そして注目があるところには必ず事件が起きる。
つまり俺が目立つせいで事件に巻き込まれやすいという最大の欠点があるのだ。
俺は、目立ちたくない。それでも目立ってしまう。
俺は朝パンをくわえて『遅刻!遅刻ー!!』もしたことないし、学ランの裏に刺繍もしていないし、転生もしてないし、左目は疼き出さないし、海賊王を就職先にはしてない。
ただほんの少し、母上様の血が強くて、女顔というか……美人、綺麗と形容される顔のグループに属していたりする。
これが結構厄介なんだ。自分の顔がそんなに綺麗だとか思わなくて、母上様及び3人のお姉様と過ごしてきた俺。女性陣に囲まれて育った俺は、多くの男子は風呂上がりに乳液を使わないことや、日焼け止めは5月から塗ったりしないことを知らなかった。
つまり、知らないうちに並の女性より美容に気を使って、自分で素質に磨きをかけていたことなんかにも気がついていなかったわけで。
初めて告白した女の子に
「貴方の隣で歩ける自信が私にはありません!!」
と振られる始末。
目立ってきた理由の99.8%は顔であることがご理解いただけただろうか?
残りの数パーセントが自分の言動にあることは……認めるけど。
自分のした業績や行為で目立つのは、まあいい。ただ、顔はうっかり生まれ持ったものだし、それをもてはやされたって俺は何一つ面白くない。それが問題の発生源になるならなおさらのこと。
だから俺はここに誓う。
「俺は目立ちたくないっっ!!」
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