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「教えていなかっただろうが、見る方法を知ってるのは生徒会長と理事長の二人だ。安心しろ。」
堂々と言ってのけたが、俺達の動揺は消えない。
「それって俺のプライベートを見ようと思えば見れたってことですよね!会長さんのヘンタイ!」
「いまどき、勝手にGPSはだいぶ犯罪の匂いがしますよ!会長。」
「会長のヤンデレー」
「会長の束縛彼氏ー」
俺、皐月君、由真旋真できゃいきゃい文句を垂れるが、会長の
「うるせえ防犯の為の最低限の措置だ。防犯ブザーでも持たされたいのか高校生にもなって。」
の言葉で静かになった。ちょっとダサいもんね防犯ブザー。
少し落ち着いてから、一年生でありながら一番しっかりしている鴇君が考え込んだように顎に手を当てて言った。
「じゃあ、久瀬先輩の居場所を知って、それでいて無理して一人でやっている久瀬先輩をほっておいたってことですか。」
「鴇君、それは俺の仕事だから……」
遮ろうとしたが、鴇君は首を横に振った。
「僕の分を超えた生意気なのは自覚してます。それでも、久瀬先輩が……追い詰められるほどに苦しまないといけないのは、どうしてだかわからないんです。」
ずっと、俺を心配してくれていたんだろう。硬く沈んだその表情に何も言えないでいると。
「けれど、会長を非難する資格は僕にはありません。だから……。」
滑るように足が一歩踏み出て、距離が詰まる。
「だから、もう一人で無理はしないでください。どうか、僕を使ってください。久瀬先輩」
かしずくように。俺の足元で鴇君は跪いた。
ふわりと広がり光を弾く髪が宝石みたいで、場違いにも絵本で読んだ騎士のようだと思った。緑の瞳は魅入るほどに綺麗で、俺を捉えて離さない。
驚いて半歩下がりかけた俺の腕をさっと取ると、その姿勢のまま微笑んだ。
とけるように優しく、それでもしっかりとした意思を潜ませて。それは、俺が今まで見た中で一番綺麗な笑顔、だった。
「どうか、僕をあなたの傍にいさせてください。」
声にならない音が漏れかけた。
何も言えない。研ぎ澄まされた美貌を真正面から受け入れると、こんなにも動揺し、うろたえてしまう。思考がまともにならない。
俺は拒否などできようもなかった。
「あ……えと。俺の傍、でいいの?ただいる……だけで。」
「『今は』それだけでも。どうかあなたの傍にいる許可をください。久瀬先輩。」
「それで君が嬉しいなら……いい、けど。」
「ありがとうございます。…………嬉しいです。」
大輪の花が咲いたような笑みに、やっぱり俺はたじろいでいる。
ぽかんとした空気の生徒会室で、それらを横目で見ながらぼそりと葦矢は呟いた。
「良かったな久瀬。下僕が手に入って。」
「げ、下僕!?いやそれは語弊がありすぎるというか鴇くんに失礼と言うか……」
「久瀬先輩が呼んでくださるのなら何でも僕は光栄です。」
鴇君の目がきらきらとしている。これはもう、引っ込みがつかなくなりましたね。
俺は久瀬泉璃17歳。生徒会会計。
生徒総会で暴れたら『後輩キラキラ王子様な下僕』……ゲットだぜ!
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