五時間目延長 ご褒美とデザート

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 生徒総会は終わったが、俺にとってはここがスタートラインだ。ここからは自分で関わりにいかなくちゃいけないと、心の中でハチマキを締める。さあ、大きな行事が一つ済んだし、帰ってなかった寮に戻って、明日からの日常生活の為に準備を……と考えていたのだが。 「何ぼさっとしてる。行くぞ。」 会長さんは、俺に向かって声をかけてきた。 「行くって……ああ!スマホ返してくださるんですよね。今からですか。」 「そうだ。だから、さっさと行くぞ。服はあるから、お前は体だけでイイ。」 と、ひよこのごとくぴょこぴょこついていった先。疲労で信じられないものが見える。例えば生徒会寮の中庭に真っ黒なリムジンが。 「行くぞ。ほら乗れ。」 「ちょ、チョマテヨ。どうしたんですかリムジンって……もしかして学園外行くんですか?」 「当然だ。黙って乗れ。」 「俺、外出届出してないんですけど‼」 「俺が出した。諦めて乗れ。」 「職権乱用!!」 俺の叫びも空しく。ささっとリムジンに乗せられる。中は広々として、革張りのソファーに絨毯の轢かれた車内と高級感漂う空間。車の中にシャンデリアって取り付けられるんですね。会長は普段の顔をしているが、ガチのリムジンなんて人生初だ。緊張して小さくなって視線を彷徨わせると、シャンパンやワインも置いてあった。なるほど用途が読み込めてきてしまったよ。 車のモーター音すらほとんどせず、微かな振動も感じない快適な車内で、運転席は仕切りがあるため見えない。つまり、沈黙で会長と二人きり。 緊張して言葉を出そうとしても何も浮かばない。俺が一人であたふたしていると、会長がこちらを緩やかに向いた。 「しばらく休め。目的地に着いたら起こしてやる。」 「いや、そんな……」 「強引に休ませられたいのならそう言え。」 「すみませんでした。席倒させていただきます。」 なんでだかわからないが、会長さんが優しい。いや、本来なら黙って強引に連れ出された時点で優しくないのかもしれないが、いつもの会長さんよりも少しゆったりと話すところも、目線も。 目を閉じてみれば、疲れが後押ししてすぐにでも寝落ちてしまいそうだった。 会長さんの隣に早く立てるようになりたいのに、今は、甘やかされているような気がして。ザラメのついた飴を舐めてるみたいな複雑さは、睡魔で曖昧に混ぜられて、にじんだ。
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