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世界が綿菓子マカロン色にふんわりしているように見える寝起きの思考回路に、見慣れないメイドさん達はあれよあれよという間に着飾らせた。服の着脱は俺のプライドで死守したが、それ以外の髪のセットやら宝石やらは俺が寝起きからの完全覚醒に至る間でさっぱり整えられ。
しっかり俺が目を覚ましたころには、綺麗になった俺がいた。
別に、俺はナルシストじゃないし美容サプリのCM再現をしているわけでもありません。でも、そうとしか形容できないほど、肌艶の調子がいいコンシーラーで隠したクマもさっぱり無くなっている。やべ。こうまじまじと見ると母さんに似ている。
年上美人といった見た目のメイドのお姉さんが、少し怒りながら「疲労は肌に悪いんですよ」とチクチク言ってたが、それにしても腕が見事すぎる。着せてもらったスーツはシンプルな紺と白だったが、びっくりするほど軽いし着心地はいいし、サイズまで完璧である。…………もしかして、買取だろうか。実家の家業的にこういうのに目が効くんだが、ブランド名を確認して卒倒しそうになる。うちの経費で落ちないだろうか。
着替えが終わって呆然とする。しばらくして部屋がノックされた。
恭しくメイドさんが扉を開けると、そこには。
濃いグレーのスーツは、仕立てがよいが肩張り過ぎないミラノ式。すらりと高く長い足を惜しげもなく主張しているが品がある。どちらかと言えば、カジュアルな服装に近いんだろうが、安っぽさも軽さもない。オールバックだが荒めに固められた髪の毛は黒く艶々として。いつもの学生服にはない、遊びと余裕を感じさせるその立ち姿。
「会長さんが、大人だ…………」
「いつもは子供だとでも言いたいのか。久瀬。お前は随分……カワイクなったな。」
「ぐ……可愛いは煽りと聞いて構いませんか。」
「褒めている。顔だけは文句なく綺麗だ。」
リップサービスとわかっているが、こういうことをさらりと言う。少し恥ずかしくて目をそらした。
流石俺様とは言えモテる要素しかない会長。俺様とは言え。
エスコートするでもなく、個室に二人きりで通される。なんとなくここにきて察しがついていたが。
「まさか、ディナーに連れてきてくださるとは思いませんでした。」
芸術作品のような繊細な見た目をした前菜をにこにこしながら口に運ぶ。一応俺も、スーパーハイレベルセレブとは言わないが最低限の礼儀作法は心得ているため、そこまで緊張はしない。すると、テーブルを挟んで向こう側の会長はゆるく頷いた。
「今回のご褒美だ。受け取っとけ。」
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