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「俺があいつと事あるごとに反目しているのは外野が勝手に盛り上がってるのが大体だ。あいつと俺が争っているつもりもなかったし、興味もない。
それでも、明確に俺に敵対視し、俺に対して反対するなら俺はあいつと対立する。」
はっきりと会長は考えを口にしてくれた。
今までは内側を見せるということ。今までは絶対に会長がしてこなかったこと。
つまり信用されたということ……だけど。
「でも、直接会長さんに、委員長が送ったわけじゃないですし…」
人同士が争うのはやっぱり好かない。どうしてだか分からないけど本能的に拒否してしまう。言い訳するみたいにつぶやくと、会長は大きなため息をついた。
「まぁまず、こんな写真を撮られるスキを作ったお前が悪い」
「ぐっ」
「警戒心バリバリのくせに、押しに弱いというのは欠点だ。お前は生娘か。男を誘ってるようにしか見えん」
「さそってなんて……」
「俺と隣に立つと豪語するなら足元から固めろ。ちょっとつつかれたくらいで倒れるな」
「はい……」
「あと今度どこか出かけるか」
「はい……ん?」
どさくさに紛れてなんか誘われたぞ?と思い顔を上げると、会長は笑っていた。
ちえっ……からかわれた。
「空気に乗せられるな。もっと相手の考えを予測しながら話せ。通常の会話も交渉の1部だ」
会長の言葉に頷く。まだまだ俺は甘い。真正面から勝負が常に正解なんかじゃないのだ。
デザートが運ばれてきた。それを見て息を飲む。
「わぁ……」
品がないと思うが声が出る。それはあんまりにも綺麗すぎるプレートだった。ケーキフルーツアイス……それらが赤色をベースに見事にまとめてある。飴でできた細工で半月が作られ、うさぎの耳が着いた小さい桜色のケーキに、フルーツは宝石のようにキラキラとした飾り切り。イメージとしては……月の世界かな。
「ありがとうございます。ほんとに……綺麗ですね。」
テンションが上がって会長さんを見つめると、軽く頷いた。
「それを食べて学園帰ってもしっかり働け」
「賄賂ですか会長」
「馬鹿言え。前払いだ」
るんるんと、デザートを口に運ぶ。あぁ幸せ。会長がこんな気の利いた事できるなんて侮っていた。甘いものほとんど食べないくせに高い高級菓子(甘さ控えめ)はめちゃくちゃ食べるから、会計としてはいかにそこを削るか悩んでたけど、1回予算を組み直してあげよう。
そんなことを考えていると。
「俺に今お前、失礼なこと考えてるだろ」
「イイエ?とんでもない。会長さんも気の利いた事をしてくださるんだなと思っただけです」
「いつでも俺は気が利くだろ。」
「……感じ方って人それぞれですよね。」
「あぁ?調子に乗るな久瀬。車に乗せずここに置いて帰ってもいいんだぞ。」
「遭難させる気ですか!?」
またからかわれたことに少し苦い思いを抱きつつ。会長からのご褒美は確かに俺にとって効果てきめんなんだとひとりごちた。
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