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水面はきらきらしていて、入ったら気持ちいいんだろうなと空想する。そりゃ小学生のころなんて、プール大好き泉璃くんでしたんでね。運動は大体そこそこできるくらいの俺だけど、泳ぎに関してはかなり速い自信がある。地獄のシャワーだとか、目を洗う水道だとかはお坊ちゃまくん達には馴染みないだろうけど、全部懐かしい。
少し黙っていたせいだろうか。ちらりと目線を合わせると何の気ないように千廣が口を開いた。
「夏入ったら海でも行くか。」
気持ちがあっさり見破られているようで、むず痒い。素直に察してくれたことを喜ぶのも甘やかされてるみたいでなんだか恥ずかしくて。てか幼馴染に甘やかされる男子高校生って文字面がなんかこう、複雑。ごちゃごちゃ考えた俺は、むっつり黙り込んだまま頷いた。
頭がジリジリと熱くなった途端。
ピューっと水が飛んできた。
なに?敵襲?と思って顔をあげれば、ニンマリ笑うのは湯灯双子。
「せんちゃん油断したなー!」
「気を抜いた人からいなくなるんだぞー!」
薄水色の髪の毛を器用に編み込んだ由真と、濃いめの青色の髪の毛をこれまた飾り立てた旋真がニヤニヤしている。特に後者の旋真は物騒なことを言って、手に持った水鉄砲をカシャンと動かした。
「おー由真くん旋真くん。どっからその水鉄砲持ってきたのさ」
「実家!」
「新商品!」
確か2人の家は世界ナンバーワンシェアの玩具ブランドでしたね。最新の水鉄砲ですか。そりゃかっこいいし、威力がすごい。
「ねーせんちゃん泳がないのー?」
由真がきゅるんとした目で聞いてくる。
「それ、さっきも皐月くんに聞かれたな。俺、今日は残念ながらパス」
「えー残念!一緒に遊びたかったね?旋真」
「そうだねー!由真。さっちゃんは機嫌悪いからさー泳ぐの苦手だもん。」
旋真はうんうんと、頷きながら言っていた。なるほどあんなにふんすこ怒ってたのは相当な苦手とみた。少し同情する。
そこに、ゆっくりと歩いてきたのは。
「雫とキキくんも……見学?」
制服のままの雫とキキくんが2人してやってきた。
ふたりが揃うとなんというかお人形さん感がすごい。舶来性の職人技巧が詰まったようなキキくんこと喜兎奇跡くんは地毛のふわっとしたパーマをくるくると風に吹かせているし、同級生の月城雫くんはメガネさえなければ美人な日本人形みたいだ。
「……えと、あの、僕は……ちょっと微熱で」
ケホと、軽い咳をする雫くん。なんだかおっかなびっくりに言われる。反対にいつも通りの無表情のキキくんはどん、と僕の隣に座った。
「海なんかに行かなければ泳ぐ必要は無いですよね。」
「えっ……キキくんちょっとでも泳ぐ気は?」
「オイラーの等式」
0って事ですね。分かりました。
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