六時間目 臨海学校

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この学園のプールは飛び込み台がついてたりもしてかなり深いところも多い。キキくんには少し怖いかもな、と勝手に思う。 もうちょっと小さい頃から泳いでいれば慣れるだろうけどあんまり水泳に触れてきてなかったのかも。 「今度足つくところでちょっと泳ごう……ね?キキくん」 「…………え」 「嫌だった?」 「まぁ、久瀬さんとなら」 なに?可愛んだけど。ちょっと照れてるのが最高に可愛い。あー弟いたらこんな感じなんだろうな。 と俺が静かに小躍りをする。なんせ姉が3人と母の家。弟とか男子兄弟が欲しかったりした夢はここで叶ったみたい。 ちょっと浮かれた気持ちを噛みしめていると。 視線だけ千廣がよこしてきた。 「なにニヤついてんだ。息子の卒業式見る母親みたいな顔して」 「そうそう……息子も大きくなって私もそろそろ母卒業かなって」 「思い出せお前は彼女いない歴イコール年齢だ。」 「奥様はき、禁断の恋をしてるってコト!?」 「お前最近ちいさくてかわいいなにかになりたがってるよな」 「だってリアルがでかつよな俺だもん。千廣みたいな筋肉ゴリラ程じゃないけど。こんなんになっちゃったからにはもう……ネ……」 「誰が筋肉ゴリラだ。色白モヤシ」 頭の悪い会話を紡ぎ続ける。 脳みそのストレージを増やさずに千廣と話せるところが気負いがなくて楽でいい。千廣の肩に若干もたれかかりながら、喋っていると。キキくんが座り悪そうにもぞもぞしている。置いてけぼりにしちゃったか、とより近くに呼んだ。そうだ雫くんも、と振り返ると。雫くんは思いっきり鼻血を吹き出していた。 プールサイドに広がる鮮血。 やばい!そうだった。雫くんは体調不良。俺のサボりとは訳が違う。慌てて駆け寄って鼻を抑えて下を向くように手助けする。 すると、両手を合わせて顔を覆った雫くんが息も耐えだえに呟いた。 「ありがとう神様。ありがとう家族概念」 「雫くん!?神様に祈るほどの大事じゃないって!保健室、そう保健室行こう」 「あっ僕のことは気にしないで。どうか旦那さんと子供と擬似家族続けてよろしく。」 「旦那さん?あーえと、千廣との話のこと……?よくわかんないけど、とにかく拝み倒すのやめて!鼻血止めよう」 「久々にガチを見たんだ。供給過多だよ。今度君の聖書(R18)あげるね。」 「俺の聖書……??」 謎言語が飛び出す雫くんに困惑しつつ保健室に連れていこうとしていると、担当教員が代わってくれる。心配だけど、ちょっと休めば大丈夫かな。俺は担当教員の穴を埋めるべく生徒を見守り始めた。 ちなみに……その後雫が新刊2冊三徹後であったことが判明したのである。
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