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それにしてもプール開きに浮かれるのは、高校生お坊ちゃま達も同じらしい。
1時間ほど見ていたが、子猫ちゃんグループのキャットファイト(構成員全員男)を諌めたり、場所の取り合いでちょっと揉めるスポーツ男子の間に入ったりとそれなりに俺は忙しくしていた。ぐったりと疲れ帰って座り込む。
なんせ暑い。プールが室内なぶん、風が全く通らないから、蒸し暑くてたまらない。それに加えてきっちりチャラ男対応しなきゃだから気が抜けない。
それとなく手助けしてくれていた千廣から濡れたタオルを渡される。ひんやりしていて、やっとこさ息を吹き返す。
「倒れるなよめんどくさいから」
「それくらいの配分はしてるよ!にしても、プールで髪の毛に造花つけるのってやっぱり衛生的に良くないよなぁ」
「あー。あそこの奴らか。外れて目に入っても知らんぞって言ったらなんか外したぞ」
「ねぇそれ涙目じゃなかった?あの子たち」
威圧感のすごい千廣のことだ。ビビって泣いてないかと目線をやるとほんのり頬を染めたネコちゃん軍団が。浮き輪も水着もカラフルなんだからそこまで飾らなくてもいいのに。でもあの反応は恋に落ちてんな。
ああそうですか。強面が好きですか。
ため息を漏らした瞬間。
視線の先には皐月くん。
飛び込み台は大混雑で、その少し横のプール際にいる。細い手足をなにかバタバタと動かしたかと思うと。
音もなく水の中に落ちていった。
周りは飛び込む人ばかりで水しぶきが凄い。
はっと周りを見るが、彼のことを誰も気がついていない。
まずい、溺れる。
そう思った瞬間には走り出していた。
「!?泉どうした……!!」
「溺れてる!浮き輪!」
最低限の言葉を怒鳴り返すと、子猫ちゃん達が持っていた浮き輪を千廣がぶんどって俺に投げた。
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