六時間目 臨海学校

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「何の話です……?」 「会計殿が皆の前で見られてよい話なら、儂はここで公開するが?」 なんだかわからないが、緒環先輩は言葉の外にカメラ小僧三人に席を外すよう俺に言ってほしい……のだろうか。一対一になるのは、まことに本当に遺憾だが、仕方ない。 「今回の授業での俺の写真の流出と販売は、認めないから。どんな形でも売ってるのを確認したらそれなりの処罰はします。あと、今後授業で部活動との公私混同があれば、予算の削減を生徒会長に提案することはお忘れなく。」 『はい……すみません。』 「それじゃ君たちは解散でいいよ。」 さっと釘を刺してから三人を退出させる。こういうパパラッチは俺はかなり強めに規制をかけてる。チャラ男としてはもうちょっとオープンでもいい気がするが、純粋に気分が悪いので見つけ次第許可を取るか、撮影料をきっちりもらう。母上様の家訓なのだ。自分をタダで売るな。 ぴしゃりと襖をしめると。ぐたーと体を伸ばしつつ緒環先輩はこちらを見ていた。 「会計殿のところの親衛隊長は大変そうだねえ。」 「いきなりどうしました。」 「いや、仕事をきちんとしている割には姿が見えないと思ってね。」 「目立ちすぎて見えないこともありますよね。」 「うん?」 「なんでもないです。それでお話があるんでしょう?」 振り返ると、懐から緒環先輩は1枚の写真を取り出した。 それを見て、硬直する。 「な…………」 そこに映っていたのは俺。カメラを睨みつけ肌は赤い。荒い息も熱も伝わってきそうな、写真。何も知らないで見たのならまるで……。 「いやぁ艶っぽいね………会計殿。」 細い目はじいっと俺を見つめている。動揺をできるだけ隠そうと深呼吸をする。 「この写真はどちらで?」 「さてなぁ」 ここですっとぼけるとは……この狐め! 「お話をしましょうか緒環先輩。」 「神楽耶で構わないのだがなぁ……」 「では、緒環神楽耶先輩。この写真をご丁寧に俺に見せてくれたのであれば説明してくださるのですよね?」 「そもそも心当たりはあるのかな?」 一瞬目を閉じる。交渉のラウンド2のゴングが鳴った。 脳内フル回転で作戦を考える。正直動揺で心臓の鼓動がビートを刻んでいる。手先は冷たくなるし、思考がまとまらないパニックだ。 けれど一番それをバレてはいけない相手が目の前にいる。 「ええ。ありますよ。けれど、写真を取らせる趣味はないかな。」 はっきりと言い切る。 作戦名「え?俺チャラ男ですけど?なにか?」つまり、写真を取られるようなことは日常的にしてますよチャラ男ですから。けれどどこから漏れたのか気になるなーというスタイルでごり押しすることに決めた。
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