六時間目 臨海学校

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今紹介した紫眩翡翠先生は保健室に在籍する養護教諭であり、現役の医師である。容姿は端麗で少しタレ目の目は穏やかで優しく。細身で華奢だが華やかな人で、生徒からの密かな人気が高い。チャームポイントの薄い桜色の髪の毛をいつも一つにまとめて垂らしている。 そんなおっとりした先生は 「泉璃ちゃん!良くきたわね。どうしたのいきなり!?まぁアタシとしては何時でも来てくれて嬉しいのだけれど。それにしてもやっぱり髪綺麗だね。ちょっといじっていいかしら。」 いつもの穏やかさも落ち着きも無くしてマシンガントークをきめている。口調は完全に女性だがれっきとした男性教諭なのだ。オネェさんなのかもしれないが……とにかく男性である。そんな先生は俺の髪を綺麗に編み始めた。もうほっとくしかない。 「翡翠!なんか理由があんだろそいつらが来たのは」 「だから何度言ってるとも思うの八千草?アタシにはちゃんと先生か、ちゃんか、女王様をつけなさいって。」 「翡翠女王様。なんかあるらしいから1回落ち着けよ」 珍しいことに八千草先輩がとめてくれた。実の所は紫眩先生との時間を途切れさせられた不快感からだろうけど。 すると動きをとめた先生はこちらを見た。 「あら。緒環がいるじゃない。何様なの?」 「先生いきなりすみません。俺の親衛隊長を教えて欲しいと言われまして、直接連れてきました。」 俺が軽く頭を下げつつ言うと一瞬俺を見てから頷いた。 「そうなのね。じゃあ一応名乗るけど、久瀬泉璃の親衛隊の隊長をしてる紫眩翡翠よ。」 「いや知っておるよ?だが、教師が親衛隊長とは……それ良いのか?」 困惑顔の緒環先輩に先生は全く気にせずに返事をする。 「別に規則としては教師が親衛隊長でも問題ないもの。先例は無いけどね。」 「職権乱用とか、贔屓とか問題ありそうなものだがのぅ」 「養護教諭の職権ってなによ?せいぜいいい保健室のベットで寝かすようなもんでしょ。でも……そうね。角が立つから基本表舞台には立ってないわ。」 落ち着いたのか俺達を座るように促しながら、先生はお茶の準備を始めた。 「それはどういう経緯で?」 「ん。そこは個人情報だからシークレットよ。ごめんなさいね。」 パチッと目が合ってウインクをされる。心得てるわとアイコンタクトで送られて安心感を抱く。 「ただ……アタシから言えることは、アタシは個人として泉璃ちゃんが大好きってこと。」 コーヒーを手渡してから俺の頭をグリグリと撫でる先生。 その動作に少し照れが混じったように泉璃ははにかんだ。
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