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じわっと嫌な汗が流れる。明確にそこを指しているということは、俺の事情を知っていると言うことか……それともただ見ただけなのか。
すると、ゴチンと言う鈍い音がした。
「ほら!泉璃ちゃんを虐めないの!八千草」
頭を抑える八千草先輩。何の躊躇もなく鉄拳制裁を加えた紫眩先生。そういえばこの人、空手の有段者だった。とっても普段は優しいし穏やかだけど、獣だらけの学園で先生やってるだけある。
「い、虐めてねえよ!翡翠は久瀬のことになると過保護すぎる!贔屓だろそれ。」
「贔屓じゃないわ。やたらめったら圧をかける先輩から後輩である子を保護しただけ。」
「そいつは生徒会会計だろうがよ。この程度のこと……」
「あら。じゃあ八千草はアタシが養護教諭で貴方が保健委員長だから仲良くしてるの?」
まぎれもなく先生が好きだから仲良くしてるんだと思います紫眩先生。心の中でつっこむ。完全に押され気味な八千草先輩は顔を朱に染めて首を振った。
「それは違うが……」
「そうでしょう?役職なんてそんなものなのよ。関係ないわね。アタシの前では頑張ってる子に無理にプレッシャーをかけるのは禁止よ。」
そう言って頭の部分を紫眩先生に抱き寄せられた。急な動きに驚くが、香りが甘すぎて黙る。イイ女のにおいするんですけどホント何?
「もう。素直じゃないんだから八千草も……脅す前に、心配してるよって言えばいいじゃないの。」
「誰がこいつの心配なんか‼」
「教えてあげたかったんでしょ。臨海学校のこと。」
くすくす笑いながら促すように片手で八千草先輩の背中を押す。すると、不本意そうな顔を引っ提げて八千草先輩は口を開いた。
「あー……体育教師から連絡来てて。臨海学校を開催するんだとよ。学校と行っても名ばかりで、基本任意参加なんだが。ほら、ここの水泳部って強豪だろ。臨海学校として水泳部が強化合宿を2泊3日で行うらしい。
……んで、お前それのお目付け役として付いて来いってよ。」
「普通に聞いてないんですが。」
「さっき知らせが来たからな。」
「ちなみに拒否権は?」
「他生徒は任意だが、お前は強制連行だ。学園長命令だしな。体育教師の野郎、お前に授業乗っ取られたと思って怒ってんじゃね?」
嫌がらせで時間外労働までさせるかね体育教師。そりゃ皐月くんが溺れたあの日の授業の後半。パニックになってるから落ち着けて授業仕切ったけども。泳ぎたくない俺を強制的に水につけるイベントに巻き込まなくたっていいでしょう……?
「だから、ソレ。うまいことやれよ。」
そう言ってそっぽを向かれる。別にもう痛くない癖に、左足の太股がびりびりとした気がして俺はため息をついた。
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