六時間目 臨海学校

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 あの見た目で、実は運動神経抜群なんですって王道君。取り巻きのヤンキーもどきとやれやれ系爽やか君も一緒だ。全くもってマナーとか気にしないスタイルね。自分の気持ちをきちんと自覚してから俺に対する笹ヶ峰くんの視線は冷ややかだ。うん、食べ物持ったままプールに飛び込もうとするとかそういうデリカシーのないところは嫌い。けどねっとりじっとり恨むなんてことはなく、なんでかカラッと湿度がない嫌い方。何か彼にされたという訳じゃないのに嫌うなんて、子供っぽいとは自覚してます。 ふと王道と目が合った。その途端、顔をしかめてそっぽを向かれた。 嫌われているのだろう。人類皆友達思考の彼に嫌われるのはレアともいえる。お互いに思うところがあるのは当然だけど、関わらなければどうとでもなるから、嫌われたところで俺は「だよね~」くらいしか思わない。 すると王道の不機嫌を察したか、取り巻きのミニヤンキーがこっちを睨みながら近づいてきた。 「何こっちみてんだ。」 「……気の所為じゃないかな。」 喧嘩腰で絡んでくるヤンキーに対する対応策を俺はあんまり知らない。 「よく見ればお前!爽の部活を潰したやつ!!」 潰してないって認めてないだけで。 総会前に調べたせいでこいつの情報は頭に入ってる。権左吉宗«ごんざよしむね»という戦国武将みたいな名前に似合わぬ、金髪とジャラジャラピアス。チャラついていると言うより硬派なヤンキー風だが、俺は本物のヤクザモノが身近にいる。全く関係ないが多分今頃、千廣はくしゃみをしているに違いない。 「なんでここにいんだよ!目障りなんだよ!」 「うーん俺も同感。なんでここにいるんだろうね。」 「は!?おちょくってんのかてめぇ!」 「ごめんついつい口からモノローグが。」 怒ってギャーギャー騒いだところで、あんまりダメージがない。逃げようかなとチラリと室内への扉を見る。すると、後ろから爽やかくんと王道も参戦してきた。しまった!逃げられない。 「おやチャラ男会計様じゃないですか。一体なんの目的でこちらへ?」 爽やかくんは撤回する。腹黒くんだこの子。 「体育教師に呼ばれた、ただの監視役だよ。」 「生徒会さんはこんな事までお仕事なんですね。随分お暇なようで」 「生徒会について心配してくれてありがとう。誰かさんが騒ぎを起こさないでいてくれたらもっと暇になるんだけどなー」 「は!?爽のことを言ってるんですか!?」 「ははは。ごめん口から本音が。」 強く睨まれて苦笑する。1年坊主と喧嘩したくは無いけれど、俺だって休み返上でここまで連れてこられて、多少イライラしてる。絡まないでくれないかなと心から思う俺の気持ち伝わるといいな。 この爽やかくんはマシュー・アレイ。ハーフの子。爽やかで王子的人気があるが……俺は本物の後輩王子を知ってるんだよなぁ……。 「だいたい貴方たち生徒会は爽に理解が無さすぎます!全部彼のせいで騒動が起こっただなんて誤認して!!隔離ばかりするボンクラ集団が!」 しかし、アレイくんの火に油を注いだだけのようで、めちゃくちゃに高速で詰め寄ってこられる。そろそろ抜けたいなと思ったその時。 「……ねぇいいかな。そのボンクラの中に久瀬先輩が入ってるだなんて言わないよね?」 きら眩しいオーラが背後からやってきた。
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