六時間目 臨海学校

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「えぇ?今の時間……?」 いきなりの来訪者に驚いて、泉璃は怪訝な顔をした。しかし出ない訳にもいかず、頭をかいて立ち上がった。 「えと、2人ともごめんね。ちょっと人来てるみたいだから、そっち対応してからかけ直すよ」 『…………。』 いきなり無言が返ってきたことに少し戸惑う。 「……大丈夫?何かあったの?」 『…………。』 返事がない。通信の不調……この天気だし有り得るので、1度切ってかけ直すことにした。ドアの方へと近寄り、外を1度確認する。するとそこにはピンクのパジャマにカワウソのぬいぐるみを抱き抱えた…… 「ちょっ……旋真!?どうしたの……!?」 ボロッボロに号泣している髪はミルクブルー。見た目的に完全に旋真だったので慌てて、扉を開ける。泣きながら俺の胸に飛びついてきて、慌てて受け止めると。 びしょびしょに濡れた瞳のまま彼は呟いた。 「せんちゃん……せまが、居なくなったぁ……」 「えっ、旋真が……?って事は旋真じゃなくて、君は……由真……?」 由真なら髪の毛は濃いブルーなのだが、いちいちそんなこと言ってられない。本人たちの顔の作りも声も瓜二つ。髪色を取り除けばそっくりな双子なのだから。 俺の胸でぐりぐりと顔を擦りつけていた彼は頷いた。 「一緒にいたの!さっきまで!でも僕がトイレ入った瞬間に旋真の気配がなくなって……見つかんなくなっちゃった……。」 「え、えと……由真なんだよな。その、見た目が……」 「旋真が取り替えっ子ごっこしよって……僕らそうして時々入れ替わるの……だから旋真の格好由真がしてるの……」 撫でて落ち着かせながら整理をすると。 由真と旋真は、予告状の騒動の後、「取り替えっ子ごっこ」と言って服装や髪を互いに取り替える遊びをしたと。時々不定期でそうして遊んでいるのだと。 そして、由真と旋真は電話を俺にした。 その後由真が部屋のトイレに入った瞬間。 旋真は消えてしまった。 パニックを起こし片割れを探して泣きじゃくった由真は俺の部屋まで来たとの事。 慌てて皐月くんと鴇くんに連絡を飛ばす。 予告状どおりのことが起きてしまったのだ。 「落ち着いて。船の上なんだから、犯人も旋真も逃げ場は無い。絶対この船にいるからちゃんと探そう。」 そう言ってさすっても、落ち着かないのか痙攣に近い震えが止まらない。それが可哀想な程で、俺は強く由真を抱きしめていた。 兄弟が連れ去られたというのは、衝撃だろう。 しかし、この尋常じゃない狂乱の様子はそれ以上の何かがあるのではないか……そんなことを考えるくらいには、由真は怯え恐れ混乱していた。 「ごめんなさい……由真が、『由真が』連れ去られるべきなのに……」 震えた声は誰にも聞こえないまま毛布に吸い込まれた。
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