三時間目 新入生歓迎会

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月城雫。二次創作同人誌界では神絵師及び神同人作家「つゆりん先生」。オタクで少しでも同人をかじったやつならほとんどが目にする神。それが彼である。描かれるイラストは繊細で綺麗でありながら、漫画の内容はライトから救いがどうやったって見当たらないけど愛はある鬱モノまで変幻自在。俺は単純にライトのギャグものを気に入っている。しかし、本人がサークルの売り子になることは酷く稀なので、出会えたら奇跡レベル。 「いやごめん……あ、この前の花嫁イラスト神だと思いました。崇めました。神棚に飾りました。貢いでいいですか。」 「よかったぁ。やっぱり見てくれる人の意見直接聞けるのはうれしいね。」 その神がたまたま同じ学校でそして昨年の新入生歓迎会で寝ているところを俺が発見するなんてなんという奇跡。 「前の新入生歓迎会のときは、僕が新刊を人間性と生命力を捧げて描いてたせいで腱鞘炎と空腹で動けなくなってたのを久瀬君が抱き上げて運んでくれたんだよね。」 「まさかその後、俺達のことを百合と言われる羽目になるとはちっとも思ってなかったけどな。」 完全に誤算だった。神絵師を保護したつもりが、あの二人はカップルじゃない。百合だ。なんて言われる羽目になっていた。もう収集が付かないので、雫共々苦笑いでノーコメントを貫いている。 「ほんとに。無理しないでね。」 そう言って、きょとんとした雫の目元を若干なぞると、粉が指についた。コンシーラーにパウダーでごまかしているようだが、隈がある。黙って指摘すると苦笑いをして雫は微笑んだ。その顔は属性を全部消し去ってもなお残るほどのかわいかった。これは心臓ぶちぬかれますわ。
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