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「久瀬君こそ、最近忙しいんでしょ?なんとなくだけど噂聞いたよ?」
取ってしまった粉を、俺の手持ちのメイク道具で軽くなおしていると、雫が話しかけてきた。さっと緊張が走る。俺の熱で頭爆発記憶ほぼなし足ひねったすやすや事変のことか……?
「そうかな?」
「だって新入生歓迎会の準備あったんでしょ?それにもうすぐ二年の合宿あるし……」
そうだ、足のことは一般には知られてなかった。生徒会のみんなとうっかりばれた風紀委員長さんだけ。しかし雫の一言で今後の予定までしっかり思い出してしまった。
「合宿近いよな……あれ班活動だっけ。」
「なんか今年は山登りらしいよ。キャンプなんてしたことないから楽しみだな……」
そうか。オタク仲間といえども雫は、親が芸術家なお家柄。庶民の遠足キャンプは初めてですか。それまでには足を直さなければと思いつつ、化粧を完成させると雫は微笑んだ。
「ありがとう。久瀬君。無理……しないでね?」
今度は雫が俺の目の下を指さした。気を使われるのはなんだか落ち着かないが、そのやさしさに触れるとやっぱり暖かい。まだ友達の雫にすら自分のことを言えない俺だけど、少しだけ周りの人と話してみてもいいのかもしれない。
そう和んだのも束の間。
「おーーい!!久瀬センリ!!どこだッッ!!」
何?俺呼び出し食らってる?
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