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俺も雫も一瞬で青ざめる。声は外から聞こえたようだが、あのキンキン声は誰だか明確だ。
『もしかして……転入生⁉』
「し、雫あの転入生となんか交流ある?」
「笹ヶ峰爽くんでしょ……?追いかけまわされて怖かったから逃げてたかも。」
「俺は全力逃走中。」
脳内は笹ヶ峰爽が黒いサングラスをかけて追いかけてくるイメージで統一された。転入生くんターゲットは雫も含まれていたのか。本当に親衛隊を刺激するの上手だ。そういえば雫君のところの親衛隊と少し転入生がもめたという連絡来てたっけ。つくづく問題発生機と化している彼に遠い目をしたところで、雫が慌てて顔をあげた。
「あの子なんでかわからないけど、久瀬くんを探してるんでしょ……捕まったら大変なんじゃない⁉」
「それは確かにやだな。あんまり彼と関わりたくないんだよね」
もう既に十分関わってくれているので俺と転入生君との交流はもうお腹いっぱいだ。そっと様子を伺うと、転入生君の周りにはいつも通りちょっぴりヤンキー風味の青年とさわやかな見た目の青年がぴっとり一緒に行動中の模様。
足速そうだな。今、全力で逃げたって無駄かもしれない。
「捕まったらひどいことされちゃうよ!僕はセンとチヒロの正式cpしか認めないんだから!」
「ん?なにそれ――」
「いいから速く!逃げて!!」
必死に言われて、ぐいぐいと背中を押される。なぜか雫が非常に焦っているし力強い。意味が分からない単語が気になったがそれに従って音楽室を出る。この場所がだめなら次は旧校舎の使われていない教室とか……そんなことを考えて足を踏み出すと、遠くから足音が聞こえた。
これはかなりやばい……かも?
素早く走り出す。雫は小柄だから音楽室で隠れきれるだろうけど、俺は此処から逃げるに限る。廊下に出て、下の階へと向かう。足音が聞こえなくなるくらいには遠くまで出てくると一息ついた。
時計を見ればまだ約30分しか経過していない。嘘だろ後2時間半もあるの?
どっと疲れてため息を吐くと。目の前の教室か白い手が伸びてひらりと誘うようにふられた。
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