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目を閉じた瞬間。
遥か後ろから激しい足音。
誰か一人を複数人が追いかけている……?
「止まってんじゃねえ。行くぞ泉。」
背後の声が俺を抜いて、前に出て腕を引っ張られる。動かなかった足ががくんと揺れて、次の一歩が出た。けれどもその男の足に合わせられなくて足が絡まってこけかける。
焦ったのも束の間。
「わかった。泉。落ちるなよ。」
なにも口にしてない俺の状況を瞬時に判断したのか、俺の腰をすくいあげて引っ張り担がれる。視界が激しく動いてついていけない。今の俺は、どうなってる!?小脇に抱えられたセカンドバック⁉
目の前の転入生君があっけにとられたのをいいことに、その隣を堂々と駆け抜けて、階段を軽く半分ほど飛び降りやがった。必死でその体にしがみつく。落とさないとわかっていても、その激しすぎる全力疾走に脳みそはシェイクされるし、振り落とされそうで。スリリングだ。
何かわめきながらまだ追いかけてくる転入生君達の声を聞いて、さらに逃げようとするのかなと思ったがいきなり動きは止まった。
「あそこ。隠れるぞ。」
「うぇ⁉」
目の前には……掃除用具ロッカー。
俺が諾とも否とも言わないうちに、ぎゅっと奥に詰め込まれた。さっと扉をしめたこいつと息を殺す。
騒ぐ声が次第に遠ざかっていくのを確認して、数秒後。
「いったか?」
「それフラグじゃね?」
「怖いこと言うなよ。人間アスレチック千廣」
「助けてやったのにご不満かよ。足プルプルの泉」
「そりゃ悪うございました!ありがとう‼」
「大声出すとバレるぞ馬鹿が。」
心地よい速度の会話と共に、俺はゆっくり顔を見上げた。薄暗いロッカーの中でも見えた顔にほっと息を吐く。
「やり方は雑だけどホントに。……ありがとな千廣。」
俺を引っ張って動かしたのは腐れ縁幼馴染こと白河千廣だった。
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