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☆☆
―――すごい場所だと思った。ずっとイギリスの寄宿舎にいたけれど、高等部から編入してきて「僕」が一番最初に思ったのはそれだった。本場と見劣りしない広大でヨーロッパ式の校舎。そして国籍の多様さではイギリスの方が勝っているのだろうけれど、個性豊かな美形の男の人ばかり。最先端の研究施設まで備えて、この学園の敷地内に町が一つある感じなのだ。最初は感嘆の声を漏らし続けてた。
期待した学園生活は、つつがなかった。僕が話しかければみんな赤くなったり、言葉に詰まるがみんな親切でとても優しい。いや、少しだけ優しくない人もいたな。「ゴンザリュウガ」くんは、僕のことが嫌いだったみたいだ。握手しようとして無視されてしまった。それでも勉強はかなり高度で専門領域も学べて面白いし、部活も掛け持ちできて楽しい。
そう、『楽しい』はずなんだけど。
やっぱりと思う気持ちはだんだん濃く強くなっていく。
どこでだって僕は「それなりに」なんでもうまくやる性質だった。妬みや嫉妬を受けなかったわけではない。それでも多くの人は僕から一歩下がっていく。尊敬というフィルターをかけられた目線はどこか遠くて、友達なんて恐れ多いとみんな口を揃えて言う。ひと月もすれば与えられる刺激はだんだん微弱になっていった。
「つまらない。」
これは寂しさのせいかもしれない。Japaneseが言うには僕は「ぼっち」なのだろう。周りの子にそのなんとなくの退屈をやわらかくして伝えると彼らは教えてくれた。
「この学園の生徒会の方々を見ていれば退屈なんてしない」
「あの方々を見るだけで素晴らしい気持ちになるのだ」
僕が彼らを入学式ぶりに『観察』しはじめたのはただの退屈しのぎだった。夢中になんてならないと思っていた。
一番目立つ『彼』を見つけるまでは。
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