一時間目 王道学園での俺的処世術

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 「鹿くんはい、カスタードパン。」 先にお腹が空いていた鹿くんのために甘くて、まあまあ大きいカスタードパンを売店で買ってきたので渡す。うれしそうにもきゅモキュと食べているので、それににっこりすると双子が近づいてきた。 「えー僕も食べたーい」「ゆまもー」 「二人のも買ったよ。はい、セマはジャムパン。ユマはチョコパンね。」 四人でパンを食べる。美味い。ほんとに美味い。鹿くんの唇の横についていたカスタードを指で拭き取ると、周りが絶叫した。 ……何故に?そのカスタードを舐めたからか?だって気になったんだよ。その味。自分の食べてるベーコンエピはしょっぱいから、甘さが欲しかった。なんで俺を見てるわけ?目立ちたくないのに。人の捕食シーンを見て、何が楽しいんだ。 「な、急に来て、オマエは一体誰なんだ!くつろぐな!!」 黒い毛玉は不満そうな顔をしていた。いや、こっちが聞きたい。オマエが誰よ。 「爽は転校生で……さっき言っていた笹ヶ(ささがみね) (そう)です。」 サツキのご紹介で、誰なのかやっとわかった。その転校生は黒い重ったるい髪の毛に瓶底眼鏡。色は白いが俺より小さく、顔の殆どがよくわからない。なんていうか、一言本心をいうのならくそだせえ。ダブダブの制服にやたらでかい声は、正直……だいぶ苦手なタイプだと思う。だって、目立ちそうな見た目してるし。 周りにもうできたらしい友達(金髪不良風)と爽やかっぽい男が俺を睨んでガルガルしてた。怖い。 ただ、俺の今の見た目は髪の毛、茶髪にピンクメッシュなんだよなあ。チャラ男なんだよ。興味あるふりしなきゃなんだよな。 「……はあ。」 「人の顔見てため息つくとはいい度胸だな!チャラそうな見た目してるし。」 おっと口から、面倒くさいよ助けてオビワンという気持ちが漏れてしまった。 ゆるっと立ち上がって、チャラ男モードに切り替えた。 「……君が、俺の見た目に指図できるなにかを持ってんの?」 「だって、赤色の髪にピアスなんて……不良みたいだろ!!」 「カッコ悪いわけじゃないでしょ?初対面で、そんなこと、わざわざ突っかかってこないで。……それとも、俺に興味でもあるの?」 どうだ!俺のふんわり拒否は!俺だと、メンタルバッキバキになって話かけることは永遠にしないぜ!軽く笑うと、挑発されたと思ったのかなぜか顔を赤くして俺をキッと睨んだ。 「興味はある!オマエあれだろ、節操なしに誰これ声かけるタイプだろ?」 ーまあ、声かけるのは確かだけど。 「そういうの!不誠実だと思わないか?」 ーえ?挨拶とか、しない系なの?俺、母上様に挨拶しないやつは人としてアウトって言われてるから、律儀にしてるんだけど? 「そうか!!オマエ、寂しいんだろ?」 ーん?寂しい?俺、幼女認定された? 「なら……『俺が友達になってやる!』」 ーはい? ビシッと俺に指を指してくる黒毛玉こと爽くん。なんか勘違い進行している気がする。
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