三時間目 新入生歓迎会

25/30
前へ
/303ページ
次へ
「あれ。捕まったんですか泉璃。」 「皐月くんこそ。逃げ切ったかと思ったのに。」 「せん、り。怪我痛くなって……ない?」 「大丈夫です!心配しないで鹿くん」 鴇くんに捕まった俺は、一応レアスタンプの檻というか捕まった人の休憩場所になっている生徒会室へ向かった。道中何回も俺の足を気遣って運ぼうかと提案してくれた鴇君には悪いが断固拒否だ。年上の兄さんプライドをなめちゃいけない。  生徒会室には風見皐月くんと綯風鹿くんという生徒会メンツの半分。それに加えて数人の委員長さんや部長さん方なんかと、捕まえたラッキーボーイな生徒がいた。和気藹々とした空気に鴇君も少し安心したようだった。  あたりを見渡すが千廣はいなかった。それに内心ほっとしている自分がいて苦い気持ちが一瞬にして広まる。喧嘩して謝るのが怖いだなんて学生かよ。高校生だわ俺。しかし、さっきから目まぐるしく変化しすぎて、落としどころの見つからない知恵の輪状態の感情から少しだけモラトリアムがほしいと心が囁いていた。おとりになって逃がしてくれたのに自分のドジで捕まった言い訳すら考えられないのだから今は許せ。と。 お茶請けを食べながらゆったり見回す。緒環先輩は見当たらない……葉露先輩も。 「風紀委員長でしたら、校内の巡回に回ったそうですよ。イベントを理由にどうやら良からぬことを企てる阿呆がいるみたいでして風紀がこれを機に取り締まると連絡がありました。それとペアの広報委員長は、要注意とのことで首根っこ掴んで連れて回してるみたいです。」 軽く聞いてみたらあっさり皐月くんが教えてくれた。多分葉露先輩のことだ。俺が顔を合わせるのを嫌がると気を使って彼を離してくれたのだろう。とりあえずは安全かと息をついたその時。とてとてと鹿くんが近寄ってきて、俺の隣にきた。 「あの、ね。たかみが、せんりを探してたよ。『俺の話の途中で電話を切りやがるとはいい度胸だ。よっぽど大事な予定でもあったんだろうな。楽しみだ。』だって。」 「たかみ……?高己⁉やっば。会長さんのこと忘れてた……」 にやっと悪い顔で笑った会長さんが頭によぎり、慌てて説明するための資料製作をせねばとパソコンに手を伸ばした。
/303ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3386人が本棚に入れています
本棚に追加