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ある程度まとめきれたところで顔を上げれば。
「な、なにこの状況。」
右隣には鹿君が俺の肩を枕にしていた。わおジャストフィット。ふかふかの髪の毛がこそばゆいが、それにしたって重い。痺れた。継続ダメージ-5。ぽんぽんと頭を軽くなでるが、全然動かなかった。
そこで左側をみると……足をしっかり組んで本を読む鴇君が若干俺に体重を預けている。ぱっと目線をあわせると苦笑していた。
「すみません。お邪魔なのは承知しているのですが、僕も動けない状態でして。」
鴇君にもたれかかるのは湯灯の双子。その二人も完全に眠り込んでいるようでお互い頭を寄せあったまま膝に肩によっかかっている。まるで双子パンダ。
「寝ちゃってるね。二人とも朝からはしゃぎすぎてたからなぁ。」
「僕も……うとうとしてて、起きたのはさっきなんです。目が覚めたらこんな感じに。」
「もうこんな時間か。イベントの閉会式もう少しだから起さないと」
さてどうするかと思って正面に顔を向けた瞬間。
「げ。会長さん」
ついになる椅子の真正面に座った、会長さんはじっとこちらを不敵な笑みを浮かべて見つめていた。その笑みは半月型の目も相まって、底知れない。
「注意力散漫。減点だな。久瀬。」
一歩近寄って俺の顎をとる。そのまま人差し指でなぞる様に喉仏をさすられて、ぞわりとした感触が沸き上がる。こっちは猫じゃないんだぞ。喉を撫でるな。
「それに拾ってきたのか。新しいオトコを。」
「男……?鴇君は後輩ですよ。別に拾ったわけじゃなくて、捕まっただけです。」
まじめに返事をしたのに全然表情が変わらない。逆光でうまく読めない会長さんの表情を伺いながら首をかしげると、すっと目を細めた。数秒俺を見つめた後、視線は鴇君に移る。しかし、喉から手は離してくれないのでぐるぐると唸りつけたい。引っ搔くぞ。
そんなことはお構いなしといったようなそぶりでかち合った沈黙は、会長さんから破られた。
「お前、小動物か子供を手なずけるのは得意か。」
「はい。僕が世話をして懐かなかった子はいません。」
鴇くんの即答。それに対して会長さんはうっそりと微笑んだ。
「現に三匹懐かせてるからな。」
なに?保育士か飼育員の面接はじまったの?
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