三時間目 新入生歓迎会

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「まあ、挑戦心は認めてやる。やるだけやってみろ。」 会長さんにぐちゃぐちゃに頭を撫でまわされて、不快度指数89パーセントこれが降水確率ならばほとんど雨が降る。この人前から、俺の髪のセットや香水が気に入らないのか、髪の毛をでかい指でかき混ぜたり、会長さんと同じ香水贈られたりするのである。こちらとするとヘアセット崩れるし、貰った香水が高すぎてお返しができないので若干困っている。それでもどこか機嫌よさげな会長さんを見て、ほっと息をついた。もう、緊張する空気嫌い。 鴇君を伺えばなんだか考え込んでいる顔をしていたけれど、俺と目が合うとにっこり嬉し気に笑った。かわいいな。 「ええ。僕はじっくり機会を待つタイプですので。……諜報の件は是非お手伝いさせていただければと思うのですが、詳しい説明をいただいても?」 「風見に一任してるから、詳しい話は聞け。報告は……風見でも久瀬でもいい。定期的に報告するのを忘れるな。」 「承知しました。では」 そういって鴇くんが手を伸ばすと、会長さんが握り返す。まるで映画で交渉成立といったシーンを見ているようだ。ヨーロッパ系の美形二人が揃うとどうにも洋画に見えてしまうのだなと静かに感動した。 「あのネコは引っ掻くぞ。鴇。」 「喜んで受け止めますよ。葦矢会長。」 「お前マゾだな。」 「御冗談を。憧れる方だけですよ。」 こんな小声のやり取りをしているなどまったく泉璃は気がついていなかったが。 「さて皆さん。そろそろ閉会式ですね。レアスタンプで捕まってないのは……四人でしたか。」 皐月くんがペラペラめくる資料を覗き込むと、そこには雫、千廣の名前が。よかった逃げ切ったのか。千廣はあの体力だから余裕だと思っていたけど、あのしつこい追及を逃げおおせたのはさすがすぎる。そして次は緒環先輩。まあ彼はスタンプを捕まえるという異常事態を起しているのだ納得した。そして最後は鹿くん!? 「生徒会メンバーで唯一逃れ切ったのは鹿さんだけでしたか。」 「え、でもここ牢屋……」 俺が慌てて声を出すと申し訳なさそうに鹿くんが顔をあげた。 「おれ、木の上で寝ちゃって、起きたらここに連れてこられてた。たぶん、誰かに捕まったと……思ったんだけど……」 「おそらくですが鹿さんの親衛隊が見つけて保護……みたいな形で移動させたんでしょうね。鹿を運んだと思われる台車と『鹿様の寝顔を拝めただけで至高でござる。』という矢文が刺さっていました。」 や、矢文!?忍者いるのか。この学園。……めちゃくちゃ会いたい。そういえばと会長さんは誰に捕まったのかなと思い見上げると、苦虫をすりつぶしたような顔で 「…………笹ヶ峰だ。」 と呟いた。聞いた途端生徒会メンバー全員思わず噴き出したが、俺だけ髪の毛をぐちゃんぐちゃんにされた。ごめんなさい。
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