三時間目 新入生歓迎会

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 喧騒も収まり。体育館で閉会式が始まった。一番最初にゴールした人を表彰するとそこに並んだ一年生二人がもじもじしていた。あらあらカップル爆誕か。慣れたものだが、男同士の色恋沙汰があり得ないほど多いことを思い出して、oh...と若干頬を引きつらせる。淡々と皐月くんが司会進行を進めるが結果についてはざっくりしか説明していない。一応レアスタンプを捕まえた人は伏せられている。「あの人を捕まえたなんて許せない!」「僕の方がふさわしいのに!」というやっかみを受けないためだ。なんというか、男子校でこう……差別的な意図はないが女々しく、これほど嫉妬深い男の娘が大量にいるのは、この学園の独特なところだよなとひとりごちる。俺にはそういった男の娘がファンとしてつきやすいということもあり、ちょっとやだなバイアスがかかっていることは否めないが。ヤンデレ、メンヘラは二次元で十分だぜ。 隣を見れば、千廣と雫、そして申し訳なさげに鹿君が並んでいる。レアスタンプでありながら逃げ切った人は紹介があるのだが、さっきから全く千廣が目を合わせない。くそ俺より身長が高いからって視線を合わせることすらできない。そんな俺を見て若干おろおろしているのが雫。どうすんだこの空気。 他の生徒たちは気がついていないようで、悲喜こもごも楽しそう……。それを見て少しだけ息を吐き出した。もてなす側として、イベントを全力で楽しんでくれた方が主催者側は嬉しいってもんだろ。 片目を閉じて、静かに呼吸を整える。 一斉に動き出した波は、今はそれぞれ小波だけれど。呑まれないようにと強く祈りながら。
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