3471人が本棚に入れています
本棚に追加
「えと、よくわかんないけど。友達ってそんな上から目線になってやるって言われるもんだっけ。」
素直に出ていた言葉に、黒毛玉は首をかしげる。友達っていうより、上から目線のうるさいやつって思ってしまいそうじゃないか。ものすごく視線を感じるし、今すぐここから盗んだバイクで走り出したい。
視線を左にすると、会長さんと目が合う。この人はまあ、助けてはくれないだろうな。この転校生のこと気に入っていってる?みたいだし。あ、この人は有象無象が近くにいても道端のちょっと丸い石くらいにしか思わなかったタイプだ。
そっと外にずらすと……オビワンがいた。
いや、それは嘘だが、救いになるヤツがいた。今俺と目があったな。逃げんな。
「ちーひろ。」
そう声をかけて、さっと転入生の隣を抜ける。見るからに面倒くさいという顔をした目付きの鋭い彼は、俺と目を合わせる。
ー緊急事態だ。千廣とりあえず話し合わせてくれね?
ーはあ。泉またなんか巻き込まれたのか。面倒くさい。
ークッキー7日分。
ーしゃーねーな。10日分なら協力してやる。
ー交渉成立だな。マイケル
ー誰がマイケルだ。
この間0.2秒。アイコンタクトで会話をすませると黒毛玉に向かい合った。
「ね、もうそろそろいいかなー?俺、千廣と約束があるんだよね。」
「に、逃げるのか?話の途中だろう。」
そんなに俺と話したい?こんなに切り上げたい話は、校長先生の朝礼と並ぶぞ。途中で貧血で倒れてやろうか。
「一年。そんなに泉と話したいなら、まず相手の都合を聞いたか。聞いてねえなら、先約の俺が優先だろうが。」
「だけど、そいつと俺は友達になりたい!」
「それは、お前の都合で泉のじゃねえ。そして、お前の都合を理解してやるほど俺はお前に興味はない。……泉行くぞ。」
幼馴染の彼の名前は白河千廣という。名前こそ俺と同じで可愛いが、バスケをやっている関係でガタイはいいし、黙っていればだいぶ整った顔だが、目付きが悪い。そして俺より身長が高い。解せぬ。
……話し方の威圧感は半端ではないが、わりとまともで俺より冷静。軽口が叩ける貴重な友人だったりする。
その千廣は、俺の話に乗って、約束を口実に手を引いてくれる。よくできた幼馴染だ。ありがたい。そう思って黙って千廣についていこうとすると誰かが反対の腕を掴んだ。
最初のコメントを投稿しよう!