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俺の言葉に皐月君は挑戦的に笑顔を返した。恥ずかしさ交じりだったのだろうキッと睨まれるような表情も喜ぶ人はいるんだろうなとどこか遠くでそう思った。
「泉璃、貴方……学園の外に恋人がいますか?」
「え?いないけど。」
「じゃあ、アイリさんってどなたですか?」
「…………え?なんで知って、」
「もう一度聞きますよ。恋人がいるんじゃないですか?」
「恋人はいない!いや、ほんとに。」
ジャンジャラと軽快な音楽が流れ始める。俺の脳内は、恋人がいないと大声で言った動揺で胸がいっぱいだ。世界で一番悲しい宣言じゃなかろうか。しばらくしてピンポーンとなった音がむなしく聞こえた。
「電話で何度も口にされていたので、恋人かなと。」
「聞こえたんだ……アイリさんはその、恋人とかではないよ。」
生徒会全員から怪しげな目で見られるが、はっきり関係を話さないのはこちらにも事情ってものがあるのだ。思いもよらない名前が出てきて驚いたが、これで俺は一勝一敗である。
最終戦。堂々と足を組んで顔を突き合わせた湯灯旋真は。
「終点が玉座の間とは上出来じゃないか!!」
「まさかのム〇カ大佐。それもマイナーな……。どうしたの?」
「僕も一勝一敗でさー!負けた方が秘密暴露なんだよー。」
「え!?まじ!?それは」
『負けられないね』
お互い顔を見合わせる。旋真の濃い紺の髪が静かに揺れていて、ここはただの楽しいパーティーゲーム会場ではなく戦場であると、俺は自覚した。
先攻後攻じゃんけんでは俺の勝利。つまり俺が後攻だ。
「泉ちゃん。覚悟はいい?」
「どこからでも、かかっておいで旋真!迎え撃ちにしてあげるよ。」
「少年誌的なノリだけど、これは嘘発見器だからね?合コンでちょっとキワドイ質問してキャッキャうふふをするためのゲームだからね!?」
「兄弟と仲間が尋常じゃない表情をしているので不安なのはわかりますが、落ち着いてください由真。」
「由真。男同士の争いに口出すんじゃねえよ。」
「会長貴方も、なにをわけ知り顔してるんですか……。今日で一番わけが分かりませんよ。」
後ろでなにか忙しそうに皐月君がつっこんでいる声が聞こえるが、俺たちの集中は途切れない。
「泉璃。君さ、この学園で怖いものがあるよね?」
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