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断定しつつ語られた言葉に、沈黙が満ちる。この学園で怖いもの……?多すぎる課題だとか、七不思議だとか、怪談だとか、無茶ばかり笑顔で言ってくる先輩方とか……でもそういうことじゃないのだろうか。少し考えたのちに俺は口を静かに開いた。
「いや。怖くないよ。何も」
静かな沈黙はあたりを覆う。嘘はついていない。怖いという言葉はどうしたって俺には受け入れられなかった。見えぬ何かに恐れも怯えもしない。
……嘘ではない、はず。
嘘発見器は、その時ばかりは静かに音を鳴らしだした。それは緊張感が故の錯覚かもしれない。
ピンポーンと安っぽい機械の音が響いたその時。かき消えるような小さな音で
「そっか。」
と儚く微笑んだのを泉璃ははっきりと見た。大人びたその顔に、不思議な気持ちがぼんやりと浮かび上がる。同級生で、仲間で……双子で一緒という印象ばかり受ける旋真のその顔は今まで泉璃が見たことのないものだった。
「……正解ってことは、俺が旋真の嘘を引っ張り出せたら俺の勝ち?」
「勿論そうだよーまあ、僕が嘘つかなかったらどっちも罰ゲームかなあ」
さっきと同じような可愛らしい表情に戻った旋真はふふと笑いながら、こちらを見ている。そういえば俺旋真の嘘をつくようなこと何にも知らないや、と思い出す。そもそも詳しく知らなないのだから。
「んーじゃあさ、旋真は俺らのこと……好き?」
何気ない言葉だった。もちろん愛してるだとかの恋愛的なことではない。ただ単純に仲間として……友達としての好きを聞いた。すると、すごく驚いたような顔をした。
「俺らって?」
「えっと、生徒会のメンバーのこと。」
「ああ……そういう事ね。」
一瞬した動揺をぬぐい隠すように旋真はにぱと明るく無邪気に笑って見せた。
「僕はみんなのことが大好きだよ」
その言葉に誰かが一瞬顔を曇らせた。それを知りながら尚更明るく旋真は笑顔を見せた。
ジャンジャラと嘘発見器が動き出す。
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