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ピンポーンと間延びした音がして、旋真はぐったりと力を抜いた。
「引き分けだあ……」
「これで俺ら最下位って何故に。」
お互いだらんと力を抜いたあたりですました顔で皐月くんがサラっといった。
「嘘をつかなきゃいいんですよ。このゲーム」
『!?』
同時に驚いた顔をした俺らに対して、大きくため息をついた皐月君は殊更丁寧に言った。
「会長は隠し事があろうと並大抵のことで動揺なんかしませんし、鹿はまあ、見た通り正直者でしょう。私もセンリのときは隠しましたが、相手がよかったから残りは二つ引き分け。由真も同様ですよね?」
「あ……ウン。そうだね」
一瞬ぼーっとしいた由真がしっかりと頷いた。そうか俺には大量にかっこつけたいところがあるから負けを作ったのか。と悔しいながらも納得する。旋真も同じ気持ちらしく軽くお互いに眉をさげた。
「どうするんだ。秘密。なにかあるのか。」
会長が静かに問いかける。この空気で!?と思わないこともないがここは腹をくくらなければ。すっと旋真を見れば拳を出していた。旋真、漢だぜ……。
堂々たるじゃんけんの後俺はすっきり負けた。
「勝った僕先ね!僕の秘密は、…………生きもの好きじゃないんだ。」
「生きものって……猫とか?」
動物大好きな鹿君が少し不安げな顔をするがぶんぶんと旋真は首を振った。
「動物は大丈夫!……なんかさーたまに深海生物特集とかあるじゃん?ああいう感じちょっと怖いんだよね。」
秘密というにはささやかなもののように聞こえたが、もしかすると本人にとっては大きなことだったのかもしれない。にっこりと笑った顔はどこか不思議に見えた。
「じゃあ次は久瀬だな。」
「なんでそんなに楽しみにしてるんですか会長さん。」
「弱みは握ってなんぼだろ。」
「発言が最低だよ会長さん。最も低いと書いて最低。」
うわっという目で見てから。俺はしぶしぶと口を開いた。
「……簡単に言えば俺のコンプレックスが秘密なんですけど。誰にも言わないでくださいよ。」
真剣な顔をすると、ぐっと全員が真面目な表情になった。
「俺、舌短い……んですよ。」
『舌が短い?』
個性大爆発の生徒会メンバーの声が揃う。なんて珍しいのかと若干のけぞる。
『それが何のコンプレックス??』
「小さい頃は舌が足りないからだいぶ活舌が赤ちゃん言葉でしたし、今でも…………その、言うじゃないですか。」
「何をだ。」
「さくらんぼの茎結べませんし。」
「むすべないと……」『何かあるのー?』
「ほら、だってキスの……」
「ああサクランボの茎を結べる人はキスがうまいとかいう俗説を気にしてるんですか。」
会長さん、鹿君と双子に詰め寄られ、あっさりと皐月くんがフィニッシュを決めてしまった。
「へえ、舌が短いのがコンプレックス……な。」
にやりと会長さんが笑って背筋が冷たくなった。みんなが呆れているような表情をしているが気にする暇なんてない。俺のコンプレックスナンバー5に入るコンプレックス大暴露で思考は擦り切れている。
「それ、誰と比べて短いってわかったんですかねえ」
皐月君の言葉に、空間が凍り付いたのもキコエテナイ。
秘密は秘するうちが花。
墓場まで持っていくつもりの秘密はコンプレックスとして露呈してそしてオマケ付きの大ダメージとなって帰ってきた。
休み時間1コンプレックスは秘めるもの おしまい
(本編再開します)
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